ボクサーの表情は髪に隠れていたりフードの影になっていたりして、あまり見えません。

また強い光が逆光となり、彼の表情を消している場面も多くあります。

一方WOMCADOLEメンバーは、ボクサーほど黒く沈んだ映像ではありません。

表情もそれなりに確認できます。

そんな中、MVの中でボーカル・樋口侑希が強い光を浴びてシルエットになっている場面があるのです。

2分24秒辺りからになります。周囲のメンバーは光から隔離され、見えなくなってしまいました。

ライター この恐怖を燃やしてくれないか
小さな心の鍵を開けろよ

出典: ライター/作詞:樋口侑希 作曲:樋口侑希

一旦静まった曲が段々と厚みを取り戻していくセクションです。

そして次の歌詞が始まると同時に、樋口侑希の表情がはっきりと映し出されます。

スポットライトの光の強さは変わっていないようです。

樋口侑希は自分の中の炎によって自らの姿を暗闇に映し出したのです。

他のメンバーも同様ですね。

外からの光だけでは本当の自分の姿、本物の強さは見せられないということではないでしょうか。

また、バンドの場合は自分が光ることによって他のメンバーを明るく照らすことも可能です。

一人で勝たなければならないボクサーは、誰かに照らしてもらうことはできません。

だからこそ、休むことなく光り続けなければなりません。

強く光ったボクサーの表情

自分の本当の強さを発揮するためには、自らの中に炎を燃やし続ける必要がある。

それを知ったボクサーの表情がはっきりと確認できるのが3分10秒付近です。

表情というよりは眼差しですね。とても強く凛とした瞳が映し出されます。

願望だけで炎は燃えない

このMVは、大事な戦いを前にしたボクサーの姿が描かれています。

勝負ですから、勝ちたいと思うのは当たり前のことです。

このボクサーも常に「勝ちたい」と思いながら走り、跳び、拳を撃っていたのでしょう。

しかし「勝ちたい」という思いは願望や希望でしかありません。

こうした願いは、自分の到達点として遠くで光っているだけ。

斜め上にあるライトを見上げて「勝ちたいな……」と言っているだけでは勝てません。

ボクサーの思いが「勝ちたい」から「絶対に勝ってやる」へと変わった瞬間、彼の心臓は燃え始めます。

斜め上を見ていた視線は真っ直ぐ前を向き、体の中に立ち上る炎は暗闇に彼を浮かび上がらせるのです。

希望の光が弱くなったとしても、炎が消えなければ歩いて行けます。

ライターに火をつけるのも、自分を燃やすのも、自分自身です。

歌詞から見るMVの意味

『ライター』の歌詞を知ることで、MVの意味をより深く理解できます。

いくつかピックアップしてご紹介します。

勝ちたいのは誰?

声を聞かせて そこにいるのだろう
誰か教えて 両目には映らない
暗闇照らすのは 太陽なんかじゃない
早くここから 連れ去ってくれないか

出典: ライター/作詞:樋口侑希 作曲:樋口侑希

何も見えない場所で、光の在り処を探しています。

光を与えてくれる存在が近くにいるはずだと思い、助けを求めている歌詞です。

他力本願な言葉が並んでいますが、彼を助けてくれる人はどこにもいないのでしょう。

なぜなら、彼がいる場所を照らすのは、彼の内なる光。

そしてそのために炎を灯すのも自分自身だからです。

まだ燃えているか?

白旗上げるなよ 戦いは終わっちゃいない
本当は憎い自分とやり合ってるだけだ
それは違うだろ 本当に確かめたいのは
己の中にある明日の炎だろ

出典: ライター/作詞:樋口侑希 作曲:樋口侑希

強い意志で「勝つんだ」と決めたけれど、やはり自分には無理だと諦めてしまう。

自分の中には沢山の自分がいます。

勝てるはずがない、もっとランクを下げろ、恥をかくだけだと口出しをするのでしょう。

そうした「考え」と喧嘩をしたら、負けてしまうかもしれません。

では、負けてしまったら炎は消えるのでしょうか。

無理かもしれないから諦める、と口では言ってみたものの、闘志は消せません。

炎が残っているなら、本心から諦めているわけではないということです。

小さな炎でも煙は上がる

本当は小さな火でもいいんだ
狼煙を上げ続けてやろうぜ
まだまだ消せない意志を持って
消すんじゃねぇぞ己の炎を

出典: ライター/作詞:樋口侑希 作曲:樋口侑希