恋愛の伝道師・松任谷由実
シングル「幸せになるために」
デビュー当時からあらゆる恋愛の情景を歌い続けてきた松任谷由実。
彼女の歌に救われたり癒やされたり涙を流した経験がきっと誰にでもあるはず。
2001年1月にリリースされたシングル「幸せになるために」も彼女の魅力が存分につまった名曲です。
アルバム「acacia」と、ミリオン・セラーを記録した「日本の恋と、ユーミンと」にも収録されています。
「幸せになるために」は恋の指針
充実した恋愛を経験したことのあるひとならば分かる美しい追憶。
かつての恋人との不意の再会に戸惑いを覚えながらも明日を生きるために彼を忘れようと誓う。
松任谷由実の「幸せになるために」は恋と人生をどう生きていくかの指針になります。
それでは仔細に見て、聴いていきましょう。
ユーミンの原点回帰のサウンド志向
オルガンとギターによるシンプルな伴奏
「幸せになるために」のサウンド・プロダクションはシンプルです。
プロデューサーでもある松任谷正隆によるオルガンのようなキーボードの調べ。
そして吉川忠英によるアコースティック・ギターのアルペジオ。
もちろん松任谷由実の唯一無二の声と抑制された素晴らしい歌唱。
大事なエレメントはこれだけです。
音をシンプルに削ぎ落としてみたかった当時の松任谷由実の心情・信条が見え隠れします。
また彼女は立教大学のパイプ・オルガンとプロコム・ハルムのオルガンの音色に魅了されていました。
「幸せになるために」で響く優しいオルガンの音は彼女の原点回帰たるサウンド志向の結晶です。
偶然の再会に戸惑うこころ
難しい言葉は一切ない
話すことは 沢山ありすぎるけど
黙って そのなつかしい顔を見せて
やっと忘れた あなたを会わせるなんて
月日は なんて気まぐれなことするの
出典: 幸せになるために/作詞:松任谷由実 作曲:松任谷由実
歌い出しの歌詞です。
無理矢理にでも忘れたことにした過去の恋愛。
その恋愛の相手とふとしたきっかけで再会します。
つもる話しはあるけれども、いまはふたりで静かに懐かしい時を過ごしたい。
偶然の再会。
きまぐれな神の采配。
彼女は戸惑うこころを隠しません。
悲しい不倫の愛の歌?
ひとつの恋愛が終息すると、相手とは一切の交渉を断ち切るひとと、良好な友人関係に戻るひとがいます。
「幸せになるために」で描かれたふたりはどちらの選択をしたのでしょうか?
この再会の前にふたりで会っていたことはなかったようです。
恋愛が終わってからの幾年月。
ふたりはかつての恋の季節からそれぞれ別にひとり立ちしているのが、のちの歌詞から推測できます。
悲しい不倫の愛を歌った曲という指摘もあり複雑な心境です。
読み進めていきましょう。