細野晴臣作曲テクノ歌謡!中森明菜「禁区」
中森明菜さんは1982年、バラードのシングル「スローモーション」でデビューしました。
その作詞作曲は「夢の途中」(セーラー服と機関銃)で知られる、来生えつこさん&来生たかおさん姉弟です。
それ以来、6枚目の「禁区」(1983年9月発売)まで、バラードとアッパーチューンを交互にシングルリリース。
「少女A」「1/2の神話」「禁区」と続いたアッパーチューンは、いずれも売野雅勇さんが作詞されました。
作曲は芹澤廣明さん、大沢誉志幸さん、細野晴臣さんと変化しています。
「禁区」はYMO細野晴臣さん作曲のテクノ歌謡という点が聴きどころ。
そのためシングルのジャケット写真にもテクノっぽい雰囲気が見られます。
編曲には細野晴臣さんのほか、山口百恵さん「プレイバックPart2」の編曲でも知られる萩田光雄さんも参加。
作詞をした売野雅勇さんは、チェッカーズ「ジュリアに傷心」など多数のヒット作を生み出されています。
そんな「禁区」は曲名からして造語というか、「禁句」の替え字です。
「立ち入り禁止区域」のイメージが浮かびますが、それはどこでしょうか?
このシングルリリース当時、18歳になったばかりだった中森明菜さん。
まだ10代という年齢も相まって、危ない恋の香りが漂います。
それでも恋に落ちてしまう女性の心理に寄り添いつつ、歌詞を考察します。
1番の歌詞を見よう!
危ない交際にあきれている
私からサヨナラしなければ
この恋は 終わらないのね
ずるい人…大人の手口ね
ため息ひとつ また催眠かける
出典: 禁区/作詞:売野雅勇 作曲:細野晴臣
チェッカーズの「ジュリアに傷心」は「~ハートブレイク」と読みます。
これは売野雅勇さんによる当て字。
このような当て字がたくさん出てくるのが、この曲の歌詞の特徴です。
例えば、冒頭の歌詞3行目、文末の漢字は「やり方」と読みます。
まるでプロレスラー長州力さんの名言や、お笑いコンビ「おかずクラブ」ゆいPさんの決め台詞のよう。
そんなわけで女性主人公はキレ気味というか、少々あきれた気分になっていることがわかります。
では何にあきれているのでしょうか?
それは恋、しかも危ない恋です。
ワクワクするような楽しい交際ではないことがわかる理由は3つあります。
いずれは別れなければいけないつき合いであること。
しかも、まだ子どもっぽい主人公からすると、年上の相手は恋愛上級者と考えられます。
おまけに、女性があきれているというのにワナを仕かけてくるわけです。
歌詞4行目の後半にあるように、この「ワナ」も当て字になっています。
眠気を催し、暗示にかかりやすい状態へと導くやり方。
これが仕かけられたワナです。
女性は危ない交際を続けてはダメ、別れなければいけないと思っています。
ところが相手は別れを切り出してくれず、ワナを仕かけてくる有り様。
自分から終わりを告げなければ、いつまでも危ない交際が続いてしまうことがわかります。
別れなければいけない理由
ときめきが 理性に目隠しする
これ以上進んだら 自信がないわ
出典: 禁区/作詞:売野雅勇 作曲:細野晴臣
歌詞1行目、最初の漢字は「こころ」と読みます。
男性に導かれるまま、好きというドキドキ感が高まっているのでしょう。
別れるべき、そんな冷静な判断ができなくなりそうになっています。
人は物心がついたときから、誰かを好きになるものかもしれません。
いつのまにかそれが恋だと気づき、告白したりされたり、交際に発展したりしなかったりします。
その道のりはまさに人それぞれ、お決まりのパターンどおりとは限らない、自由なものです。
ただ、年相応のつき合い方という道徳的・倫理的な考え方もあります。
あるいは、もしかしたら男性は結婚しているのかもしれません。
もし不倫ならそれは絶対にダメです。
ただ、そこまで確実にアウトな話なら、これまでの交際でも既に心を失っていることになります。
その点が歌詞にそぐわないので、2人が別れなければならない理由は年齢になるでしょう。
サビの歌詞を見よう!
どこが「禁区」なの?
戻りたい 戻れない
気持ちうらはら
とまどいはもう愛ね…
そろそろ禁区
出典: 禁区/作詞:売野雅勇 作曲:細野晴臣
恋が愛へと発展。
まもなく「立ち入り禁止区域」に差しかかるというサビです。
それはいったいどこなのでしょうか。
これまでの「若者らしい恋」は安全地帯だったと考えられます。
そうすると「大人っぽい愛」が立ち入り禁止区域に相当しそうです。
年相応の交際のままなら、危険な香りが漂いつつも、まだ安全。
ところが大人っぽい交際に発展すると、本当の危険が待ち受けています。
その手前で、つき合い続けるか、別れるか、悩んでいるわけです。
本気だから引き返せない
あそびならまだましよ
救われるから
他のひと愛せれば
いいのだけれど
それはちょっとできない 相談ね
出典: 禁区/作詞:売野雅勇 作曲:細野晴臣