稼いでもすぐに
札束食うYAGI
黒いYAGI YAGI
黒いYAGI YAGI
出典: YAGI feat. T-Pablow, G-k.i.d & Vingo/作詞:T-Pablow,G-k.i.d,Vingo 作曲:MURVSAKI
ここからは「YAGI feat. T-Pablow, G-k.i.d & Vingo」の歌詞に注目してみます。
そもそも曲名の「YAGI」とは何を意味するのでしょう?
T-Pablowが歌うフックでは”黒いYAGI”という言葉が使われます。
しかも”黒いYAGI”は札束を食べるのです。
古くからキリスト教においてバフォメット(Baphomet)という悪魔の存在が信じられていました。
バフォメットは黒魔術を司りその頭はおそろしい黒山羊の形状です。
このことから”黒いYAGI”はダークヒーローのようなイメージを連想させます。
G.O.A.T=Greatest Of All Time
また、かねてよりアメリカではSNS上で”G.O.A.T(ゴート)”というスラングが流行。
これは"Greatest of all time=史上最高"の略語でアスリートを称賛するときに多用されます。
もちろんUSヒップホップでも"SWAG"のように頻繁に登場するスラングです。
ここまでを総合すると”黒いYAGI”が意味するのは史上最高に金持ちでイケてるダークヒーロー。
つまりBAD HOPのことを指していると解釈できます。
「YAGI feat. T-Pablow, G-k.i.d & Vingo」徹底解説【後編】
「YAGI feat. T-Pablow, G-k.i.d & Vingo」はタイトル通り3MCのマイクリレー。
T-Pablowがセクシーに歌うフックと1stバース。
G-k.i.dのゴリゴリの2ndバース。
そしてVingoの自由自在なフローが聴ける3rdバースです。
今回は3人の個性的なバースに注視していこうと思います。
「溢れるYAGI」-T-Pablow
コメント欄にYAGIが溢れる
一人じゃ使えねぇ
仲間 女へ
出典: YAGI feat. T-Pablow, G-k.i.d & Vingo/作詞:T-Pablow,G-k.i.d,Vingo 作曲:MURVSAKI
「YAGI feat. T-Pablow, G-k.i.d & Vingo」はYoutube投稿からほどなく10万再生を記録。
彼らの代表曲「Kawasaki Drift」に至っては500万再生を優に超えています。
バズった動画に付き物なのが賛否で溢れかえるコメント欄。
スマホを手にした聴衆は今後のBAD HOPに投資をしてくれるであろう潜在的なファンです。
こうして巨万の富を得ることになるBAD HOPクルーの多くは貧困家庭の出身。
欧米では貧困家庭出身のHIP HOPスターが多く存在します。
彼らの多くは急激な富裕層化により得たお金の使い道が分からなくなるそうです。
高級車を乗り回しブランド品で着飾る。毎夜浴びるように飲むシャンパン。
それでも使い切れないほど資産は増えていきます。
日本のラップスターKOHHは「貧乏なんか気にしない」でこう歌いました。
俺たちは貧乏な億万長者笑ってる毎日
働いて稼いだ金を自由に使って
買いたい物を買ったら誰かにあげたい
貰ったらお返しをする ズルい損得はいらない
今でも最高なのにもっと超最高な未来
出典: 貧乏なんて気にしない/作詞:KOHH 作曲:理貴
かつてBAD HOPは理不尽な上納金を収めるため過酷なビジネスに手を染めました。
川崎区は日本有数の工業地帯。
かつては日本コロムビアの本社工場が川崎にあったことは有名です。
同時に「世界一空気が汚い街」とBAD HOPのメンバーは口を揃えて語ります。
工場や現場仕事に付ければまだマシな方。
時には黒いバンダナで顔を隠し夜通し追われる身になるのです。
現在の彼らのトレードマークは黒いバンダナではなく「Gucci Scarf」。
家族よりも強い絆で結ばれた仲間達は損得なしでお互いを支え合って生きています。
そこには日本から消え去ってしまった正しい共同体の姿が見えるようです。
極貧生活からファッションアイコンへ
ゴメンね??で
自慢してるファッション
オレもゆくゆく
だけどプライベート
見せびらかすほどのもんじゃないもの
毎日ラクして
増やす明日も
出典: YAGI feat. T-Pablow, G-k.i.d & Vingo/作詞:T-Pablow,G-k.i.d,Vingo 作曲:MURVSAKI
歌詞に”?”が出てくることについて。
筆者は武道館公演には運悪く行けませんでした。
そのため「BAD HOP ALL DAY vol.2」の歌詞カードの有無は不明。
配信ヴァージョンには歌詞は掲載されておらず...。
やむなく歌詞は全て音源を聴き書き起こしています。
彼らの独特のフロー(歌い回し)は聴き取りが難しく数か所判別できませんでした。
話を戻しましょう。
今や彼らはGQ JAPANで”DIESEL+BAD HOP”特集を組まれるほどのファッションアイコン。
それだけでなくSNS上では彼らのファッションを参考にした、という声が続出しています。
中には編み込みヘアにした4歳児が「YZERRの髪型にしたい」という投稿も。
同時に彼らの成功に嫉妬を覚える方も多いそうです。
特に地元川崎の不良たちの報復は恐ろしいものでしょう。
かつて世間を賑せた「川崎中二殺害事件」はBAD HPの身近で起こっています。
もちろん彼らは無関係ですがあのような凄惨な事件は日常のことのようです。
しかし彼らはそんな”負の連鎖”の鎖から解き放たれました。
音楽で金を作る。
楽しみながら音楽を作ることが収入としてリターンされるのです。
血のにじむような努力も今は楽しくて仕方がない。
しかしフッドスターであるBAD HOPは苦労している姿をファンには見せません。
ラクして稼いでるというのは一種の照れ隠しなのでしょう。