二者間の権利とそれを侵害した者に対する損害賠償の請求などを定めた法律を題材に取った「民法第709条」は、2014年のクリスマスイブにリリースされたミオヤマザキのデビューシングルです。

1年のうちで日本中のカップルが最も気合いを入れて身体で愛を確かめ合う日と言われているクリスマスイブに、不倫とその損害の賠償を求める人求められる人の歌が世に放たれたのでした。

「民法第709条」PV

当初、公開されたPV歌詞主人公の女性と、交際相手の男性男性の妻のそれぞれの目線を描いた映像で構成されていました。

人気AV女優の有村千佳、白木優子両名を起用したPVには「不倫現場」を再現したかなりセクシーな場面もあり、相当刺激的です。その予告編が下記の動画です。

「民法第709条」予告編映像 / ミオヤマザキ

その過激さのためか、公開サイトにはコメントが殺到。賛否両論あるものの、PVは解禁3日目にして「自主規制」で公開を中止され、新たに別の動画がPVとして公開されたのです。

現在、PVとして公開されているのは下記の動画です。

真っ黒い画面に重なる「不倫は犯罪です」という言葉。そこにそっと浮かび上がってくる石田純一の名言「不倫は文化だ」という文言。続くのは立法府の象徴とも言える国会議事堂の姿です。

民法第709条 / ミオヤマザキ

続く映像に重なって歌詞がさまざまなフォントサイズで次々と画面に現れるという、リリックビデオとして生まれ変わった「民法第709条」PVです。

「民法第709条」の歌詞

「民法第709条/ミオヤマザキ」のPV動画はトリックムービー?!話題のデビュー曲の歌詞をチェック☆の画像

「民法第709条」の歌詞は不倫を描いたものです。歌詞の主人公は妻子ある男性とお付き合いしている女性。交際相手の妻を称する人から手紙が届きます。

拝啓

はじめまして。
いつも主人がお世話になっています
さて、この度は、お話がありお便りを差し上げました

この件に関して主人は
何も知りません。
ここはひとつ女同士だけで…

敬具

出典: 民法第709条/作詞:ミオヤマザキ 作曲:ミオヤマザキ

これが「民法第709条」の歌い出しの部分です。これはつまり、次の通りです。

要約すると内容は

今去れば
一切合切なし
悪くもない
名案なんじゃない?
問題ないわ

手を引かない?
きっと後悔しない
貴女の為でもあるの

出典: 民法第709条/作詞:ミオヤマザキ 作曲:ミオヤマザキ

手紙の内容は、つまりこういうことでした。いま別れたら何も言わない、ということです。妻は「権利を侵害された」「損害を受けた」と考えていますが「いまなら咎めないから別れて」と言っています。

イントロに「不倫は犯罪です不倫は犯罪です不倫は犯罪です……」と機械のように繰り返す声が入っています。しかし、歌詞の主人公の女性はこのように考えています。

こちらこそ初めまして
いつも旦那様をお世話しております
会う度愚痴ばっかり
果たしてそこにあるのは愛?
それとも…

私は悪くないわ

出典: 民法第709条/作詞:ミオヤマザキ 作曲:ミオヤマザキ

妻も主人公の女性も男性と別れる気はさらさらなさそうです。

歌詞冒頭の手紙の通り「女同士だけで」話し合ったのでしょうか。交渉が決裂したのでしょうか。妻から女性にまた手紙が届きます。「内容証明通知書」と標題がついています。

貴女は私の夫が既婚者である事を知りながら、
密会を繰り返し反復継続して不倫関係を続けております。
以上の行為は、私の独自の調査により明らかであり、
現在、私の平穏な婚姻関係は傷付き、
多大な精神的苦痛を受けております。
本書面到着後3日以内に、
貴女から何らかの対応が得られない場合は、
民法第709条の不法行為とみなし
損害賠償訴訟へ移行する事をご承知下さい。

出典: 民法第709条/作詞:ミオヤマザキ 作曲:ミオヤマザキ

「夫と別れないと訴訟を起こします」という通知です。さて、不倫はほんとうに「不法行為」なのでしょうか。

日本では許されない
分かってます
ごめんなさい
裁判万歳

ウルサイな×4

出典: 民法第709条/作詞:ミオヤマザキ 作曲:ミオヤマザキ

訴えられそうな女性の方もこんな風に考えていますが、実は「不倫」自体は日本の法律に触れる訳ではありません。「不倫」を禁じる法律はないのです。

ただ「不貞行為」が認められた際には訴訟を起こすことが「できます」というだけのことです。「不貞行為」とは婚姻や婚約、内縁などの関係がある者が配偶者以外の者と肉体関係を持つことです。

「不貞行為」は法律で禁じられていることではありませんし、罰されることでもありません。夫婦や恋人間には「貞操義務」が発生すると考えている人も多いのですが、法律上は義務ではありません。

ですから、配偶者以外の者と恋愛しても肉体関係が立証されなければ訴訟自体起こせません。「一緒に食事しただけ」、「キスだけ」などは、感情の上ではどうあれ、法律上は不貞行為には当たりません。

曲冒頭で「不倫は犯罪です……」という台詞が繰り返されていますが、日本では不倫も不貞行為も犯罪ではないのです。

しかし、「不倫」や「不貞行為」によって生じた損害について訴訟を起こすことはできます。この損害についての訴訟を起こすときに用いられるのが「民法第709条」なのです。