唇から 零れ落ちた ラララ
ほんの少しだけ 大気を揺らした ラララ
とても 小さな声 唯一人が聴いた唄 ラララ
出典: 才悩人応援歌/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
堅く結んで耐えていた唇から、それでも零れ落ちた何かが、空気中へ溶けてゆきます。
誰にも届かないそれは、自分の鼓膜だけをか弱く揺らして霧散しました。
唄だったのか、声だったのか、音だったのか、それさえも定かではありません。
大切な夢があった事 今じゃもう忘れたいのは
それを本当に叶えても 金にならないから
痛いって程解ってた 自分のためのあなたじゃない
問題無いでしょう 一人くらい 消えたって
出典: 才悩人応援歌/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
子供の頃に抱いた夢がありました。憧れた理由は純粋かつ単純なものです。
目を輝かせて語っていたその夢は、しかし今では忘れたいと願いたくなるほど幼稚な理想でしかありませんでした。
仮に本当に夢を叶えたとしても、それだけで一生食べていける保証がない以上、追い続けること自体が不毛なのだと理解してしまったのです。
世界は自分に都合良く動いてはくれない。自分だけを必要としてくれる人だっていない。
自分が世界から消えたところで、何も問題など起こらないのでしょう。
ファンだったミュージシャン 新譜 暇潰し
売れてからは もうどうでもいい
はいはい全部綺麗事 こんなの信じてたなんて
死にたくなるよ なるだけだけど
出典: 才悩人応援歌/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
好きだった歌手の唄が、いつからか心に響かなくなっていました。
マイナーだったその歌手に自分を重ねて応援していたから、売れてしまった姿を見て置いて行かれたような気持ちになったのでしょう。
夢、愛、友情、理想、希望・・・。明るい未来を期待させる言葉たちが、安っぽい綺麗事のように思えてしまいます。
そんな言葉を信じていた自分が滑稽で、不意に「死にたい」と感じました。実行できはしないのだけれど。
その喉から 溢れ出した ラララ
ほんの少しだけ 温度を上げた ラララ
とても 短い距離 その耳まで泳ぐ唄 ラララ
出典: 才悩人応援歌/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
腹の底、喉の奥から溢れ出した何かが、また大気を震わせます。
微かな熱を帯びていたそれは、少しだけ自分の体や周りの空気を温めてました。
まだか細く弱弱しい音だけれど、いつか自分ではない誰かの元へと届いてくれるでしょうか。
隣人は立派 将来有望 才能人
そんな奴がさぁ 頑張れってさぁ
怠けて見えたかい そう聞いたら頷くかい
死にたくなるよ 生きていたいよ
出典: 才悩人応援歌/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
平凡な生活を送っていたある日、とある人から「頑張れ」と声をかけられました。
その人は、才能に恵まれた立派で優秀な人物。周囲からの声援や脚光を一身に浴び、それに応え続けています。自分とは正反対です。
「頑張れ」とは、一体どういう意味だったのでしょう?
自分は自分なりに、必死で毎日を生きているつもりでした。もうすでに頑張っている状態なのです。
でも、「頑張れ」と言われたということは、少なくともその人からは自分はまだ力を出していないように見えたということ。
誰かと同じだけのことをしても、同じだけの結果が出てくれない。だから他人の目からは頑張っているように映らない。
その事実に気付かされる度に、何度でも「死にたい」と感じてしまいます。本当は生きていたいのだけれど。
世界のための自分じゃない 誰かのための自分じゃない
得意な事があった事 大切な夢があった事
僕らは皆解ってた 自分のために歌われた唄など無い
問題無いでしょう
出典: 才悩人応援歌/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
得意だと思っていたことも、かつて抱いていた大切な夢も、全部自分のためのものです。
自分が今ここにいるのは、世界のためでも、他の誰かのためでもありません。
響かなくなってしまったあの唄だって、もともと自分のために歌われていたものではないのです。
何の影響も及ぼさないのだから、少しくらい声を出してみたって、問題無いでしょう?
唇から 零れ落ちた ラララ
その喉から 溢れ出した ラララ
とても 愛しい距離 その耳だけ目指す唄 ラララ
僕が歌う 僕のための ラララ
君が歌う 君のための ラララ
いつか 大きな声 唯一人のための唄 ラララ
出典: 才悩人応援歌/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
唇から零れ落ちた音が、喉から溢れ出した声が、いつか自分以外の誰かにも届きますように。
僕が僕のために歌った唄と、君が君のために歌った唄が重なり合って、どこかで悩むたった一人を応援できる唄になりますように。
誰のための歌?
最後に
曲のタイトルは「才悩人応援歌」ですが、歌詞を辿ってみると、視聴者を直接勇気付けるような言葉は出てこないんですよね。
悩んでいる人に対して力強く励ましてくれているわけでもない。
ただ、歌詞の一つ一つに共感できる部分がたくさんあって、気付けば自然と感情移入して聞き入ってしまっているような、そんな曲なのです。
曲の解釈についても様々な見解があるとおもいますので、ぜひ一度聞いてみてください。
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