ジョンによる「マイ・ベスト・フレンド」
静かなるクイーンによる名曲
1975年11月21日発表、クイーンの通算4作目のアルバム「オペラ座の夜」収録曲。
1976年5月18日、アルバムからシングル・リカットされた「マイ・ベスト・フレンド」をご紹介します。
クイーンの中では一番地味な存在とされるジョン・ディーコン。
しかしバンド史上最高の売上を誇るシングル「地獄へ道づれ」なども書いています。
「マイ・ベスト・フレンド」はクイーンの音楽的頂点「オペラ座の夜」の中では穏やかなクッションのよう。
プログレッシブ・ロックやハード・ロック曲が並ぶ中でひときわポップな楽曲です。
ジョン・ディーコンの温厚な人柄が滲むような曲ですが歌詞をよく読むと情熱的でもあります。
原題の「You’re My Best Friend」の「My Best Friend」は友だちではなく最愛の人という意味。
友情を歌った曲ではなく情熱的なラブソングです。
メンバー中、最年少であったジョン・ディーコン。
寡黙、温厚、地味、滋味がある、よくできた人。
そんな彼が育んだ愛や音楽の謎に迫りたいです。
ジョン・ディーコンの公開ラブレター
映画「ボヘミアン・ラプソディ」でも話題に
Ooh, you make me live
Whatever this world can give to me
It's you you're all I see
Ooh, you make me live now honey
Ooh, you make me live
出典: マイ・ベスト・フレンド/作詞:John Richard Deacon 作曲:John Richard Deacon
映画「ボヘミアン・ラプソディ」でも少しだけこの曲の話題が出ます。
大作「ボヘミアン・ラプソディ」をシングルとしてリリースしたいクイーン。
頑として首を振らないレコード会社役員やプロデューサー。
一部の役員が「ジョンの『マイ・ベスト・フレンド』でもいいじゃないか」という発言をします。
二番手、三番手でもいいじゃないかというようなニュアンスにも取れて失礼な役員だなと観客は思うはず。
実際「マイ・ベスト・フレンド」は「ボヘミアン・ラプソディ」に次ぐシングルとしてリカットされます。
イギリスでは最高7位、アメリカのビルボードでは最高16位とまずまずのセールスです。
この曲の価値はセールスで決まるものではなくエバーグリーンなサウンドが後年まで愛されます。
印象的なエレクトリック・ピアノはジョン・ディーコン自身によるものです。
クイーンのメンバーはそれぞれ色々な楽器を演奏できるのが強みでしょう。
ストレートな恋愛表現
「ああ、君の存在で僕を生きていける
この世界がぼくに如何なるものを与えてくれようとも
君だけだ、僕には君だけしか見えない
ああ、君の存在で僕は生きていけるんだよ、ハニー
ああ、君の存在で僕は生きていけるんだ」
使役動詞の和訳は中々難しいです。
意訳になりますがご了承ください。
本当に「僕」は「君」のことを愛していることが伝わる歌詞です。
これ以上、深読みなどしようがないのですがストレートな感情表現。
実際にジョン・ディーコンのパートナーであるヴェロツカ・テツラフに宛てて書かれています。
ジョン・ディーコンの公開ラブレターのようものだとお考えください。
しかしリスナーが様々な想いをダブらせるのは自由です。
当時の若者はこの曲をカセット・テープに落として好きな人にそっと渡しただろうなと想像します。
幼い恋の告白にも熟年カップルの愛の交歓にも使える歌詞です。
ジョン・ディーコンはクイーンの中でこそ地味ですがリア充全快の身分でしょう。
こういう素直で微笑ましい愛は誰にとっても清々しく感じるものです。
「My Best Friend」=最愛の人
留守中に妻を安心させるため
Oh, you're the best friend that I ever had
I've been with you such a long time
You're my sunshine and I want you to know
That my feelings are true
I really love you
Oh, you're my best friend
出典: マイ・ベスト・フレンド/作詞:John Richard Deacon 作曲:John Richard Deacon
「Friend」の意味を学校英語の知識のまま「友だち」と訳すとこの歌の熱情が伝わりません。
「My Best Friend」で最愛の人と訳します。
以下、和訳です。
「ああ、君は僕が出会った中で最愛の人さ
これほど長い間、君と一緒にいたね
君は太陽の光のように眩しいし、僕は君にもっと知って欲しい
僕の気持ちは真実だってことを
本当に愛しているよ
君は僕の最愛の人なんだ」
ここまでおおっぴらに愛を謳えるというのは素晴らしいことです。
ジョン・ディーコンは「地獄へ道づれ」などではハードボイルド小説のような世界観を書きます。
しかしアルバム「オペラ座の夜」周辺の時期はまだまだ穏やかな歌詞です。
このカップルはすでに結婚生活を贈っています。
ツアーなどで家を留守にするときなどにパートナーに心配ないよと想いを伝えるニュアンスを感じてください。
クイーンのツアーは各地で派手な盛り上がりをしました。
特に日本では女性たちがアイドルのように彼らをもてなします。
そんな派手なツアーをしていても「僕」には「君」だけだとジョン・ディーコンはいいたかったのでしょう。