異例な曲「三ツ星カルテット」
歌詞は背景とともに理解したい
2010年12月15日発表、BUMP OF CHICKENのメジャー通算4作目のアルバム「COSMONAUT」。
このアルバムの冒頭を飾る楽曲「三ツ星カルテット」はアコースティック・ギターの音色が優しいです。
ただしコピーするには難しい楽曲かもしれません。
この曲のギターは変則チューニングで弾かれています。
また、6/4拍子と5/4拍子という変拍子での演奏になっているのです。
難しいのはサウンド面だけではありません。
タイトルも不思議です。
「三ツ星」という3にまつわる言葉と「カルテット」という4重奏を表す言葉が並んでいます。
さらに歌詞も詳しく見ていくと解釈に行き詰まるのです。
今回の記事ではこの楽曲「三ツ星カルテット」の歌詞をその背景をもとに解釈いたします。
それでは実際の歌詞を見ていきましょう。
音楽は生きているという想い
ある日のバンド・ミーティング
合図決めておいたから お互い二度と間違わない
夕焼けが滲む場所で 待ってるから待っててね
出典: 三ツ星カルテット/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
歌い出しです。
いきなりドラマが始まります。
男女のラブソングのように受け止めることができるでしょう。
ところが藤原基央がこの曲の歌詞を書いた背景をうかがうと事情が違うようです。
歌詞を書いた前日のバンド・ミーティングが納得いかなかったから創った曲であります。
前日のバンド・ミーティングが音楽のテクニカルな議論に終始したことに藤原基央は不満を抱えました。
音楽でのトラブルの解決はテクニカルな議論の中ではなく、あくまでも生きた音楽の中で解決しよう。
それが藤原基央を突き動かした想いです。
バンド事情とラブソングの装い
合図を決めるという歌い出しには議論を尽くした痕跡がうかがえます。
藤原基央は「三ツ星カルテット」で音楽を創ることの喜びを歌に替えるのです。
ただし、もっと普遍的なラブソング的な描写を添えます。
バンドの内部事情から生まれた楽曲であることを感じさせない歌にしようと努力したのです。
バンドのメンバーとの約束。
その約束を守っていこうよという意味合いが透けます。
一方でラブソング的な相手への待望・交歓を歌い上げてもいるのです。
非常に複雑な条件で生まれた楽曲でもエンターテイメントとして成立させようという気概が素晴らしい。
今回の記事は歌詞の解釈に関わる背景について触れないではいられません。
それでもリスナーである皆さんには解釈の自由があります。
ここで歌われていることは「愛」についてのものであることに変わりはありません。
受け取る人によって変化するであろう様々な解釈も大事にしていただきたいです。
まず「三ツ星」とは何か
他の3人とカルテット
どこにも行かないままで どこにでも行ける迷子
恒星を3つ目印に 知らない内に知り合った
出典: 三ツ星カルテット/作詞:藤原基央 作曲:藤原基央
難解な箇所ですので丁寧に紐解きます。
迷子とは端的に指摘すると藤原基央自身の姿です。
在りし日の若い頃の影かもしれません。
そんな迷子の彼が3つの恒星に出逢ったというのです。
タイトルにもある「三ツ星」のお話になります。
BUMP OF CHICKENのファンの皆さんがこのラインについて「定説」を導き出しました。
「三ツ星」というのはBUMP OF CHICKENのロゴと関係するというのです。
BUMP OF CHICKENのロゴはインディーズ時代から使用されています。
この章のトップ画像をご覧ください。
ロゴの中に4つの星が描かれているのが分かるはずです。
藤原基央自身が星であるために、彼からは他の「3つの星」しか見えません。
この「3つの星」こそ彼が信じるバンド・メンバーの象徴です。
この「三ツ星」との出会いは藤原基央の人生の基軸でしょう。
知らない間に逢っていたというのは、彼らが幼稚園からの幼馴染みであったことを指します。
自我が芽生える遥か以前から彼らは友だち同士でありました。
藤原基央から見える「3つの星」と一緒にカルテット(4重奏)をする。
それがタイトル「三ツ星カルテット」の意味になります。