この愛が、実って、そしていつか終わっていくまで。
二人の間には愛、それしか存在しないのでしょう。
愛しすぎて愛しすぎてどうにかなってしまいそうでも、誰も、何も間に入ることはできません。
限度を知らない愛は、他の何も目に入らなくなって、堕ちるところまで堕ちていくのです。
愛するが故に、お互いを傷つけてしまう。
いけないとわかっていても、愛してるからこそ、お互いに傷つけあう。
その結果、愛しているのに、憎しみが生まれてくる。
どうしようのない感情に引きずられて、もう脱出不可能な泥沼にはまってしまいます。
それでも、それもすべて相手が愛しいが故。
そんな状態から、助け出してほしいと、誰にともなく助けを求めます。
溺れる……
冬が嫌いと云う冷えた手は
とうに選ばれて届く距離
掴むのを赦せよ
一層壊して水面が 遥か頭上へ
「溺れる。」
出典: 遭難/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎
お互いに気持ちが通じ合い、冷えたその手を温めることだってできます。
胸を高鳴らせながら、そっとつかむその手。
もう何もかもわからなくなってしまうくらいの幸福を感じながら、その愛に溺れていきます。
もう、その手を離すことはできないくらいに。
そしてお互いに手を握り合ったまま、深く、深く、愛の海に沈んでいくのです。
真実は要らない
こうやって今振り向きもせず
慈しみ合うこと自体
危ないとは判っていても黙っている
嗚呼もう如何にかなるかも知れない
答に気付いても未だお互い微笑み合う真昼
紅いネイル!
だって真実等に興味は無い…
下品な芝居で定刻
果敢ない想いを真っ白に隠して置いて
嗚呼もう如何にかなる途中の自分が疎ましい
然様さようなら
お互い似た答の筈
「出遭ってしまったんだ。」
出典: 遭難/作詞:椎名林檎 作曲:椎名林檎
他人の言葉に耳も貸さず、誰の視線もまるで目に入らぬかのように愛を重ねる。
お互いに溺れすぎてはいけないと、本能が忠告を発しているのにそれを無視して。
例えどうなっても、今、この愛を制御することは不可能です。
その愛の裏に何があろうとも、今は関係ない。
この愛を前にしたら、真実だって意味を成しません。
この気持ちだけが、確かなものだからです。
もう狂ったようにこの愛に夢中になって、正気を失いそうになっていきます。
むしろ、理性を保っている自分をもどかしく感じるほどに、この愛は二人を狂わせます。
結末に何が待っていても。わかっていても、もうどうすることもできません。
だって、「出遭ってしまった」から。
愛に溺れる「遭難」
潔いまでに、他の全てを投げ出して、狂おしさを感じさせるまでに一つの愛に溺れて行く様子が鮮明に描かれています。
こういう激しく、制御の効かない乱れゆく激情の描写において、椎名林檎の右に出るのもはいないのではないでしょうか。
周りが許さない愛でも、自分の気持ちは抑えられない。
歌詞の中にある”真実”や”赤いネイル”は、愛する相手にはすでに他の女性がいることを感じさせます。
禁断の恋でありながらも、どうすることもできずに溺れていく。
まさに愛に”遭難”してしまったのでしょう。
助けを求めているようですが、果たして本当に救い出してほしいのか、それともそのまま溺れていたいのでしょうか。
本音はいったいどちらなのか、この曲の魅力に溺れながら、思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
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