70年代の男女の関係性を描写

主人公は立場の弱い女性?

「かざぐるま」が発表されたのは、1970年代の中盤以降。時代は60年代からの流れをまだ引きずっています。

しかし、恋愛模様は確実に古い感性から脱出していました。

男女の恋愛にはもはや旧態依然としたものはないと思われていた時代だったのです。

ところが、いざお付き合いが始まると男女の優位性が浮き彫りにされました。

そう、男女の関係はまだまだ男性が優位性を保っていたのです。

よって、この曲に登場する女性の主人公も弱い女性として描写されています。

男性に捨てられたら生きてゆけないという設定の女性像なのです。

当時の日本は、女性の社会進出が今ほど自由だったわけではありません。

むしろ女性は結婚して家にいて、夫の帰りを待つもの、というイメージが定着していました。

でも本当に、この楽曲に登場する女性はただの弱い女性なのでしょうか?

「かざぐるま」という楽曲を通して、当時を生きた女性たちの真実に迫りましょう。

時代を反映する当時の男女の関係

今の時代ならば、当たり前のことも当時は違っていました。

女性の社会進出が阻まれおり、「男尊女卑」という意識も根深く存在していました。

今ならばそのような発想、たちどころにセクハラで訴えられますね。

しかし、当時の女性たちも男性に尽くす、というのが普通の発想でした。

なので男性の気に入らない行動は厳に慎んでいた時代だったのです。

女性にとって最も恐れていた「別れ」という局面。

「かざぐるま」は「別れ」に怯える女性の心のあやを描いた楽曲のようです。

しかし、ただ単に怯えていただけではありません。

真実の愛の存在に気付いた、女性の心の奥底からの渇望だったのです。

では、早速1番の歌詞からみていきましょう。

もはや演歌を思わす男女の愛

フォークソングの世界観から逸脱?

私の心はあなたの腕の中
貴方の心は気ままな風ね

出典: かざぐるま/作詞:松山千春 作曲:松山千春

「かざぐるま」の歌詞の出だしは、フォークソングというよりも演歌のそれに近い感じがします。

本来ならば、もっと明るく爽やかに曲を流していくのがフォークソングのはず。

しかし、この曲の展開はのっけから演歌の世界そのもののようです。

この歌詞に登場する女性像は、いきなり弱い女性像を表現しています。

ちょっとでも油断したら、すぐに違う女の人のところに飛んでいきそうな男性を憂いています。

あんなに素敵な出会いを通して、一緒になったのに。

どうしてこんなにすがってしまう女性になってしまったのか。

それもみんな素敵すぎるあなたがいけないから。

女性の気持ちを代弁するとしたら、こういう具合になりそうです。

そう、主人公の女性にとって、愛する人はこの男性だけなのです。

それほどかけがえのない愛が、女性を支配していたのでした。

女性は男性にぞっこんなだけ

曲の出だしは演歌チックになってしまいました。

ただ、本当に女性はいつも怯えていたのでしょうか?

女性がこの男性のことを好きで好きでどうしようもないのは嫌というほど分かります。

だから、ちょっとした男性の移り気が許せないのです。

もしかしたら、男性の方はそんな女性の一途さが少々、窮屈なのかもわかりません。

だから、女性の前でも移り気っぽい部分を見せているのでしょう。

追いかければ逃げるのが人の情。

男性は、そんなことを思いながら女性と付き合っているのかもしれませんね。

女性の男性を思う不安な気持ちは次の歌詞にも表れます。

あなたなしでは生きてゆけない…

女性の思い

貴方の言葉に心乱れて
とまどう私はかざぐるま

出典: かざぐるま/作詞:松山千春 作曲:松山千春

こんなに尽くしているはずなのに。

男性の口から出る言葉が痛いほど身に刺さる。

女性の思いは、男性には届かないのでしょうか?

「あなたの思いで私はいくらでも変われるのに。

なのに、あなたは私をじらすだけ」。

女性は、どっぷりと自分に向いてくれない男性の態度に一抹の不安を感じるのでした。

運命を変えた男性の魅力