男女の愛のもつれを描いた楽曲

主人公の男性は傷心旅行?

この曲は人生を「」と読み替えて歌っています。

確かに男性にとって、人生とは旅そのものなのかも分かりません。

旅は本来、楽しいものです。特に仲間と連れ立ってゆく旅は一生の思い出になりますから。

ただ、この曲の主人公の旅は自分だけの旅です。

何かから逃げ出したいがための旅のようです。

容易に想像できるのは、つき合っている彼女とのいざこざからきた突発的行動でしょう。

歌詞中に説明はありませんが、恐らく主人公はマイカーをとばして旅に出たのです。

そう、喧嘩をしてしまって、一時の怒りに突き動かされての旅です。

つまり、一種の傷心旅行というわけです。

男性は、持っていきようのない心の動揺を抑えるためにあてのない旅に出たのです。

自分を見つめ直す旅なのか?

世の男性にとって、旅とは人生に例えられるくらい尊いものでしょうか?

それとも人生が旅のごとくだということでしょうか?

いずれにしても主人公の男性は、行ったことのない場所に行って自分を見つめ直したかったのでしょう。

旅を人生そのものに置き換えるほど、主人公の心の動揺は大きいようです。

それほど喧嘩してしまった女性は、男性にとってかけがえのない人なのです。

旅に行くことで自分の人生を見つめ直して、そしてもう一度女性とやり直したいと思ったのです。

それでは歌詞を拾っていって、男性のそれらの思いをみていきましょう。

旅先にて

都会の雑踏から離れて

深く耳をすませば朝一番の汽笛
街はにわかにざわめいて

出典: 人生の空から/作詞:松山千春 作曲:松山千春

主人公が行き着いた先は、どうやら都会の喧騒を避けた場所のようです。

車で、着の身着のままで出てきたのでしょう。宿などは手配していません。

恐らくその日は車中泊で過ごしたのでしょう。

旅に出てから幾日か経っているはずです。今の自分をそろそろ振り返れるようになりました。

だから、朝もやに走る始発電車の音も聞こえるようになりました。

目と鼻の先にある街も、夜の眠りから覚めて活動を開始したようです。

街のざわめきが、そろそろ懐かしく思えてきたからでしょう。

それまでは、そんなことを感じる余裕もなかったからなのです。

主人公の男性は、ようやく気持ちを切り替えつつあるようです。

その思いは、次の歌詞に続きます。

でも、まだ心から謝れない

遠い旅の空から君に送る便りは
力まかせのなぐり書き

出典: 人生の空から/作詞:松山千春 作曲:松山千春

主人公の男性は意を決して手紙を書きます。

今の自分の思いを素直に綴った手紙を

しかし、あの時の喧嘩のシーンが脳裏に思い出され、手が落ち着きません。

「ハッキリ言って悪いのは女性の方だ。俺は悪くない!」。

そんな思いが胸の中に残っているから、自然と手紙を書く字が乱れます。

「しかしそんなことでは仲直りできない。悪いのは自分だ」。

男性は必死になってそう思い込もうとします。しかし、若さというものがそうさせてくれないのです。

そして男性の思いは次の歌詞に続きます。

きっとまた会える

まわり道でも旅の終わりに
君にもう一度、会えたならいいね

出典: 人生の空から/作詞:松山千春 作曲:松山千春

この歌詞からは男性の強がりやせ我慢といったものが見え隠れしてきます。

男性は、行き先を決めていない旅に出たはずです。

しかし、女性に送った手紙の返信次第では予定を早めて帰りたいのです。

それを「遠回りして余計な時間を食ったけど、君のために早く帰ってきたんだ」、と思わせたいのです。

ここまでの歌詞をみていれば、非があるのは女性の方だと感じさせます。

行くつもりでもなかった旅に出たのも、原因は女性との口論。

その中身はもしかしたら男性に対する裏切りだったかも分かりません。

ただ、歌詞にはその部分を触れた箇所はありません。

そのあたりの事情が曖昧になったままなので、男性は落ち着かないのです。

しかし、2番の歌詞から徐々に追い詰められて焦る男性の心情が現れてきます。

喧嘩別れの本質に迫る