松山千春「君を忘れない」
1996年4月20日にリリースした39thシングル
「君を忘れない」は、松山千春の楽曲の中でも「大空と大地の中で」や「長い夜」とともに代表曲の一つであり、一度は聞いたことがあるという人も多いと思います。
オリコン週間ランキング14位を獲得し、1990代以降の松山千春のシングルとしては最大ヒット曲となります。
「君を忘れない」はゆったりとした歌い出しから徐々に想いが高ぶっていくメロディーに独特の声がのって、ラストではいつも涙がほろっとこぼれてしまいます。
松山千春の想いが伝わって、名曲をさらに昇華させていますよね。
作詞・作曲も松山千春が担当しており、カップリングには「今を生きたい」が収録されています。
テレビドラマ「みにくいアヒルの子」の主題歌を担当
岸谷五朗の名演技が涙を誘うドラマ
「君を忘れない」は、1996年に放送したテレビドラマ「みにくいアヒルの子」の主題歌を担当しました。もともとあった楽曲ではなく、このドラマのために書き下ろした作品で、歌詞とドラマがぴったりとマッチしていますよね。
このドラマの主役を演じたのは、岸谷五朗です。
北海道にある全校生徒10人という小さな学校の先生、ガースケ(岸谷五朗)。ガースケは何があってもぜったに放り出さない、見捨てない、全力投球でぶつかっていく先生でした。
ある時、親の都合で東京に引っ越すことになったクラスの男子・清。精一杯のエールで送り出しますが、しばらくしてガースケは清がクラスでのいじめを苦に自殺してしまったことを知るのです。
北海道の学校が廃校になるのをきっかけに、東京の小学校に移動したガースケが、北海道では経験することがなかった生徒が抱える様々な問題に全力で立ち向かっていくというストーリー。
授業ボイコット、援助交際、親の別居など小さな体で傷を抱えながら生きる子供たちに、熱血先生の言葉が響いていく姿に毎回涙がボロボロとこぼれた記憶があります。
「みにくいアヒルの子」は生まれた時は醜かったアヒルが、とても美しい白鳥に成長するという昔ばなしです。
このドラマも、どんな生徒だって劣等生はいない。誰だって自分にしかできない一番星を持っているのだからと、子供たちの魅力を信じて育てる先生と生徒のお話。
誰もが特別というメッセージは、「君を忘れない」の歌詞にも込められているのではないでしょうか。
挿入歌も松山千春
このドラマでは、主題歌のほかに挿入歌「大空と大地の中で」も松山千春が歌っています。
また特別出演として、ドラマにも出演もしていますね。
このドラマは、VHS版はリリースされたものの、DVD化にはなっていないようです。
「君は忘れない」の歌詞
挫折から立ち上がろうとしている君
君は砕け散った 夢のかけら ひとつひとつ
小さな その手で集め
出典: https://twitter.com/0318chii_/status/850676237655605248
”小さなその手”という言葉で、ドラマでの”子どもたち”を意識しているのが分かります。
そしてそんな子供たちが望む夢というのは、決して野望や願望などではなく、とても身近な小さなものではないでしょうか。
たとえば”親に愛されたい””皆と一緒に遊びたい”
でも、それすら叶えられずにつらい思いをしている姿が想像できます。
粉々になった夢を、また元の姿に戻すために一生懸命に拾う姿には、胸を締め付けられます。
いいさ やり直すと 笑っていた君の頬に
こぼれる涙を見たよ
出典: https://twitter.com/0318chii_/status/850676237655605248
「大丈夫」と言葉にしている時ほど危険だということは、誰もが気付いていると思います。
相手に心配をかけたくないという気持ちで笑顔を作る君。
でも、心が悲鳴を上げているからこそ、涙が勝手に溢れてきてしまうのではないでしょうか。
きっと、この夢は何度も何度も修復して、そのたびに砕かれてきたのでしょう。
それでも、頑張って諦めずに笑おうとする健気さが痛々しいですね。