はにかんだのは誰?
全然なんともないのに
涙が出るなんて 困ったな
愛想笑いも
様にならないくらいに 今日は 変だ
出典: はにかんでしまった夏/作詞:川谷絵音 作曲:川谷絵音
何となく始まった恋をまるで遊び感覚で楽しんでいた主人公。
自分が恋愛の主導権を握っている、というような余裕を感じさせる描写が続きました。
しかしいざその恋を失ってしまった今、なぜか感情が制御できません。
考えたっていないのに
君は絶対にいないのに おかしいな
はにかんでしまった 夏を
見逃さず睨んだ
出典: はにかんでしまった夏/作詞:川谷絵音 作曲:川谷絵音
のめり込んでいない恋愛であれば、終わった瞬間に相手の存在を「なかったこと」にできるのかもしれません。
しかし今、なぜか相手の存在が心や頭から消えていかないのです。
のめり込んでいるつもりはなかったけれど、いつの間にか相手の存在が自分の中に入り込んでいたのでしょう。
それほど相手を好きになってしまったということですね。
相手に対する想いに気づいた主人公は、思いもよらない自分の感情が照れ臭かったのかもしれません。
照れてしまうということは、相手への強い想いを認めることになります。
遊び感覚だったのに?主導権を握っているはずだったのに?
蓋を開けてみれば未練を垂れ流していることが分かり、憤っているのでしょう。
「はにかむ」という言葉は「照れ臭そうな仕草」とは別の意味も持っています。
「歯を剥き出しにする様子」です。
夏の終わりという感傷的なムードの中で恋をしてしまった主人公。
「夏」が彼をあざ笑うように歯を剥き出しにした、とも考えられるのではないでしょうか。
制御不能な感情
自分のペースを守っていたつもりでも、気づけば相手のペースに巻き込まれています。
それほどまでに相手を好きになっていたということです。
トンネルの向こうに「君」がいない
身体を重ね合う度に
筒の長さが 増えていく
出典: はにかんでしまった夏/作詞:川谷絵音 作曲:川谷絵音
一歩引いた態度を取っていても、関係が深くなるに連れて更に「君」しか見えなくなるのです。
視野は一段と狭くなり、距離感も掴みにくいでしょう。
のめり込むほど離れていくという現状を認識できません。
鋭さを兼ねた武器を
打った時の 愛情熱
完成した瞬間 冷めてった
出典: はにかんでしまった夏/作詞:川谷絵音 作曲:川谷絵音
例えば、相手を何かから守るための武器を作る場合。
相手のことを想いながら、真っ赤に熱せられた鉄よりも更に熱い想いを込めるのでしょう。
一心不乱に鉄を打ち、頭の中は相手のことでいっぱいです。
つまり、周りが見えていません。筒越しに見ているのと同じですね。
鉄を打ち終えて顔を上げたとき、守るべき相手の姿は見えなくなっているのです。
「はにかむ」とは?意味や類語!語源や漢字!「はにかむ」と「微笑む」の違い | Meaning-Book
「はにかむ」とは?、「はにかむ」と「微笑む」の違い、「はにかむ」を使った例文や短文など(意味を解釈)などを掲載。
すぐに忘れるはずだったのに
僕の痛みは 寝違えただけ
酔いしれた 心が冷めるだけ
だけど離れない
泡になった 君が揺らめいてる
出典: はにかんでしまった夏/作詞:川谷絵音 作曲:川谷絵音
一日経てば、あるいはひと晩眠れば解決する不調を並べています。
その程度の傷だと思っていましたが、実際は違うようですね。
単なる泡であれば、炭酸水の泡のように立ち昇って消えていくはずです。
あるいは石鹸の泡だとしても、何らかの衝撃でパチンと割れて消えるでしょう。
しかし「君」は水の中をたゆたうばかりで上昇はせず、消えもしません。
「君」自身がそこにとどまりたいと思っている可能性も捨てきれません。
しかし「君」を取り巻く主人公の存在がどろりと粘性を帯びていて、泡の動きを妨げているとも考えられます。
この曲では後者なのでしょう。