全然 何ともないはず
涙が出るなんてないはず
でも感情的なブランコに
振られ続けるの 何で
考えたっていないのに
君は絶対にいないのに おかしいな
はにかんでしまった 夏を
見逃さず睨んだ
出典: はにかんでしまった夏/作詞:川谷絵音 作曲:川谷絵音
自分の感情の予想外の変化に対して少し動揺している様子が「はず」という言葉から読み取れます。
自分の中から完全に消えたはずの相手の存在が、主人公の中でうごめいているのでしょう。
数回漕いだブランコは、それ以上漕がなければ惰性で動くだけ。次第に振れ幅が小さくなり、やがて止まります。
しかし天に届かせようという強い意志を持って漕ぎ続けていればブランコは止まりません。
多少は揺れたものの止まる寸前だと思っていたブランコは、予想とは裏腹に動いています。
漕ぎ手は「君」。主人公は自らの力で動きを止めることができないようです。
夏への恨み言
寒くなっても 衣替えせず
まだ夏を引きずってやるから
覚えてろってさ
全く 誰に言ってんだか
出典: はにかんでしまった夏/作詞:川谷絵音 作曲:川谷絵音
「君」との恋と夏という季節は強く結びついています。
夏が終わってしまえば、心に残る相手の存在が消えてしまうのではないかと危惧しているのでしょう。
ですから、せめて自分の中で夏が終わらないようにしてやるんだと歌います。
衣替えをせずにいれば夏が終わらないでいてくれる。これは「おまじない」なのかもしれません。
歯を剥き出しにして過ぎていこうとする夏に向かって歌っているのではないでしょうか。
しかし「夏」に実体などなく、歯を剥き出しているのも主人公の妄想でしかありません。
馬鹿みたいだ、と自分自身に呆れている様子が窺えます。
秋には決して続かない
結局 君のことが好きなんです
涙が出て 今日も困ってます
感傷的なスタイルは
似合わないはずなんだ
出典: はにかんでしまった夏/作詞:川谷絵音 作曲:川谷絵音
ここでやっと自分自身の本心と向き合うことができました。
なぜこんなにも自分の中で予想外の変化が起きているのか。
全ては君への想いに起因しているのです。
相手を失って初めて存在の大きさに気づく、ということはよくあります。
しかしこの主人公は失う前から気づいていたのではないでしょうか。
軽い気持ちで恋をして、駆け引きを楽しむ大人な自分。それを「演じていた」だけなのだと推測します。
時間を経るごとに視野が狭くなり、相手のことしか考えられなくなっていったのです。
もしくは、今まではクールな恋愛しかしてこなかったのに、今回に限ってはのめり込んでしまったのかもしれません。
どんどん惹かれていく自分に気づいていながらも、引き戻すことができなかったのでしょう。
考えたっていないのに
君は絶対にいないのに おかしいな
はにかんでしまった夏を
見逃さず睨んだ
はにかんでしまった秋は
見逃してしまった
出典: はにかんでしまった夏/作詞:川谷絵音 作曲:川谷絵音
相手の存在は頭の中から消し去ったはずなのに、なぜか重くのしかかる。
なぜなら頭の中ではなく心の中に相手が居座っているからなのです。
クールなふりをしていながらも、この恋の記憶は消したくありません。
夏と結びついた恋は、夏が終わってしまえば消えてしまうかもしれない。
だから夏が過ぎて行かないように睨みつけました。
本当ならば夏が終わっても「君」と一緒にいたかったのでしょう。
しかしこの恋はすでに終わっていますし、どう頑張っても秋まで続くことはありません。
秋まで続かないのであれば、せめて夏が終わりませんように。
これもまた「おまじない」なのかもしれませんね。
あなただけの『はにかんでしまった夏』を!
川谷絵音の歌詞は、擬人法や比喩表現が多く取り入れられています。
リスナー全員に同じ光景を思い浮かばせる比喩もあれば、人それぞれが好きなように解釈できる比喩もある。
「はにかむ」という言葉ひとつ取っても、いくつもの解釈ができます。
だからこそ川谷絵音の歌詞は聴き飽きず、聴けば聴くほど様々な解釈が生まれるのではないでしょうか。
ご自身なりの『はにかんでしまった夏』を想像してお楽しみください!
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