青春パンク界の英雄
1990年代後半から起こったメロコアブーム。
その影響を受けて生まれた青春パンク界を代表するのが銀杏BOYZです。
カルト的と言われるまでの、圧倒的存在感。
多くの伝説を残し続けてきたバンドです。
ボーカルの峯田和伸は、ティーンエイジャーたちから神と呼ばれた存在。
彼が作り出すエモい歌詞と切ないメロディーは、多くの人の胸を焦がします。
リビドーに突き動かされるような曲調が多いのも彼らの特徴です。
しかし、今からご紹介する【もしも君が泣くならば】は違います。
おそろしいまでに甘く優しく、そしてピュアな曲なのです。
大人になりきれない少年の初恋を思わずにはいられません。
ロマンチックな言葉に酔いしれながら、遠い日の恋を思い出す。
その傍らに、この曲が流れていてほしいと願います。
ストレートな歌詞
君を想う
銀杏BOYZの曲は、恋をする男性が主人公になることがほとんどです。
青春パンクを語る要素として、欠かすことのできないテーマ。
それは、青臭い片思いです。
ウブな少年たちから見た女の子は、純粋で高潔な天使のよう。
そのため、彼らのCDジャケットには可愛い女の子が起用されています。
生身の女性を知る前の目線で描かれた、男性の理想を具現化したようです。
まだ擦れていない、ピュアな恋心を表現した歌詞にご注目ください。
誰も君のことを 悲しませたくない
誰も君の泣き顔 見たいなんて思ってない
出典: もしも君が泣くならば/作詞:峯田和伸 作曲:峯田和伸
主人公の少年は、泣いている少女を遠くからそっと見つめている。
手を差し伸べたり、優しく声をかけることはできません。
おそらく彼はまだ不器用で、女の子の前で緊張してしまうから。
この曲は、少年の声に出せない閉じ込めた想いが描かれているのです。
僕も君も弱いんだ
次に続く歌詞はこうです。
胸の中にある気持ちを 決して恥じる事はない
人間なんて誰だって駄目なんだ
出典: もしも君が泣くならば/作詞:峯田和伸 作曲:峯田和伸
これぞまさに青春パンク。
少年はぎこちなくも、泣いている少女に声援を送ります。
おそらく少女は、悲しい事があって涙を流している。
それを必死で堪えようとしているのかもしれません。
「僕も君と同じで、駄目な時はあるんだ」
優しく隣に寄り添って、少年はそう声をかけたいと願っている。
本来ならそうするべき場面です。
しかし、少年もまた自身の恋心を恥ずかしく思って隠している。
この歌詞は、少女と自分に向けて放った言葉なのでしょう。
不甲斐ない自分の姿に鬱々としている人を救う言葉です。
こんな言葉をかけられたら、嬉しくないはずがありません。
多くのリスナーが峯田についていく理由もわかります。
人間なんてみんなそう
欲望があるから生きられる
アゴがはずれるくらい 幸せ噛みしめたい
胸がはちきれるくらい 幸せ抱きしめたい
出典: もしも君が泣くならば/作詞:峯田和伸 作曲:峯田和伸
先ほどと同様に、韻を踏む印象的な歌詞です。
生きることの根源的希望を、わずか2行で表しています。
シンプルでド直球な熱い歌詞が胸に刺さります。
まさに、我らが峯田の神業といったところでしょう。
幸せになるために誰もが必死に生きている。
主人公である少年も。そして、例外なく少女も。
当たり前のことですが、忘れがちなことでもあります。
欲望があるから人は生きられると、考えずにいられません。
銀杏BOYZの曲は、思春期特有の欲求不満が原動力です。
自分を突き動かす衝動を恥じるなと、喝を入れてくれます。
ティーンエイジャーたちを照らす、星のような歌詞です。