宇多田ヒカルのシングル「This Is Love」の歌詞に迫る！収録アルバムは？(PV動画あり)

いきなり少し難解な部分が出てきました。物語は真の自由を求める若者を描いていますが、ここではいきなり「自由を奪われたい」と相反するフレーズ。これは恋愛したい、愛が欲しいと直接訴えかけてきています。

そして「冷たい言葉と暖かいキス」。そっけない言葉とは裏腹の心の内、つまり、これではっきりと、この歌が恋愛の歌だということがわかります。かなり宇多田の恋愛観が色濃く出ていますね。

「デジカメ」から想像すると、当時結婚していた旦那さんの紀里谷和明氏のことでしょう。

冷たいと暖かいの対比はこの曲全体を通して一つのテーマになっているようです。冷たい枕も暖かいベッドもどちらも心地が良い、二人の愛が次第に少しずつに育まれていきます。

「鳴り止まない遺伝子」というのは自分の本能の叫びかもしれません。そして狂おしいまでにあなたのことを求めている、子供が欲しい、ということを意味しています。

悪い予感とわくわく、ここでも相反するイメージが出てきます。実はこの部分が宇多田の歌詞の肝であり、この相反することの間を行き来するのが、愛だと捉えているようです。

こうして見てみると、使われている言葉はどれも平易で難しいものはないのに、常に反対の言葉が同時に存在していて、解釈を難しくしています。ですが、それらの一見相反する言葉は実は対立してはいません。どうやら宇多田は、その相反する言葉が表す事物の間を行き来することが心地よい、安心なのだと考えているようなのです。そして安心こそが愛なのだと。

男女間でも、例えばいつも優しくされるのも最初は良くても、それが次第に居心地が悪くなるなんてこと経験したことはありませんか？時にはそっけないことも愛情の証だったりすることもあります。

宇多田はいつも物事を科学的に捉えているようです。自分も含めた、極小の微粒子から大宇宙にわたるあらゆる存在は、常に流動的で絶対的なものではない、そう考えるとあらゆる存在は常に動き続けているのだから、愛の形も常に動いているはずであり、そしてその変化していることに対してこそ安心を感じ、愛を感じる。宇多田はそう愛を捉えているようです。

そうしてみると「FREEDOM」のテーマとは全然関係ないじゃないか、と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。自由を求める心、その自由の形も常に時代や場所、個人個人でも違っています。やはり自由も固定した、これが自由だなどというものはなく、常に変化して行くものなのです。宇多田はそのことを恋愛をテーマとして取り上げながらも伝えたかったのだと思います。

いかがでしたでしょうか。本当に宇多田ヒカルの歌詞は奥深いですね。これを当時23歳くらいで書いているのですから本当に驚きです。最先端の物理学者とほとんど同じような世界観を持っているといっても過言ではないのではないでしょうか。

これから更にどんな世界観を切り開いていくのか、ママになっても創作意欲の衰えない宇多田ヒカルから、目が離せません。