心に雨が降っているとき。

不安で胸一杯で 狂うくらい悩んで 涙拭いて耐えて
何も信じられなくて 困るくらい疑って 泣いた分笑って

出典: 雨あがり/作詞:松本健太 作曲:松本健太

絶え間なく不安になったり、悩んでも悩んでも答えが見つからなかったり。

何を、誰を信じればいいのかわからなくて、自分でも嫌になるくらいに人を疑ったりしてしまう。

こういう状態を、”負のスパイラル”と言いますね。

雨の降り始めを想像してみてください。

ポツポツと雨粒が降ってきて、「あ、雨降ってるなあ」って気づいた頃にはもうザーザー降り。

こんな経験、ありませんか?

歌詞で歌われている心境も、それによく似ていると思います。

はじめは全然自覚がなかったのに、ふと気づいたときには深みにはまっていた。

アリ地獄のように、もがけばもがくほど抜け出せなくなる。

ずーっと降り続いていつ止むのかもわからない雨の日のように。

終わりが見えないって、すごく怖いことですよね。

いつ終わるのか、いつ解決するのかわからないからこそ、悩んでいるときって辛いんだと思います。

追い打ちをかけるように、雨足はひどくなる。

あぁ 都合のいい奴が 増える擦り傷 小馬鹿にするでしょう
あぁ 声にならない痛み 明日を眩しく照らせ…

出典: 雨あがり/作詞:松本健太 作曲:松本健太

一人で悩んでいるときに、他人から投げかけられる棘のある言葉って、心に重くのしかかりますよね。

もしかしたら自分のことを想って言ってくれているのかもしれないけれど、言ってしまえば”ありがた迷惑”。

本当にあなたへの気持ちがある訳じゃないのに、ただ口を出したいだけの”都合のいい人”。

不安や悩みで弱っているときって、こういう人の存在がすごく厄介なんですよね……。

でも、面と向かって口答えなんかできないし、へらへら笑ってやり過ごしてばかり。

そういう、”声にならない自分だけの痛み”が、どんどん心に積もっていく。そしてまた…。

心に降り続く雨が、一層ひどくなっていきます。

それでも、止まない雨はない。

雨降りやんだかい? まだ水たまりに映る顔が暗い
祈り空鮮やかに 願い届いた夜に流れ星
悩み迷ったかい? また行き止まりの君には幸あれ
曇り空 晴れ渡り…

出典: 雨あがり/作詞:松本健太 作曲:松本健太

悩んで悩んで疲れた心。きっと、今が辛くて仕方がないという人は、そういう状態にいるんだと思います。

この曲の魅力は、ここから始まっていきます。WANIMAはあなたに問いかけます、”雨は降りやんだ?”と。

想像してみてください。

人に「雨は止んだ?」と聞かれたら、あなたはまず何をしますか?

筆者は、空を見上げると思います。

あるいは、窓の外などに目を向ける。つまり、視点を別のところ移すんです。

「雨あがり」のすごいところは、歌詞にテクニックが詰め込まれているところなんですよね。

短い曲ながら、歌詞のなかで視線誘導することでリスナーが思い描く映像を操作しているんです。

ここでは、不安や悩みといったネガティブなものから、ひとまず別の場所に視点を移させているんですね。

と思ったら、次のフレーズでは”水たまり”が登場します。

せっかく移した視点が、また下に戻ってしまいました。しかし、ここでお気づきでしょうか?

雨が止んでいることに。

歌詞では、水たまりに”顔が映っている”という描写がありますよね。

写真のように、雨が降っているときは水面に波紋ができていて、表情までは写りません。

でも、ここの歌詞では表情が”暗い”ということがわかる。

つまり、波紋がない=雨が止んでいることになるんです。

そして次のフレーズでは、”空”や”流れ星”など、視点が一気に上へ向きましたね。

さらに、雨のモノクロームなイメージから、”鮮やか”や”晴れ”といった色彩まで加わってきました。

この部分が、「雨あがり」という曲のターニングポイントになっていると筆者は感じました。

明日、天気になあれ!

雨あがり羽ばたく鳥の様に…
雨あがりにかかる虹の様に…
あなたの心が晴れますように…
明日は晴れ 頑張れますように…

出典: 雨あがり/作詞:松本健太 作曲:松本健太

曲のラストは、WANIMAの特徴ともいえる早口な歌詞でたたみかけるように歌われています。

登場するのは”羽ばたく鳥”と”かかる虹”、これは始点と終点に例えられると思います。

前者が始点で、後者が終点。ここで、ちゃんと”終わりがある”ということを連想させてくれるんですよね。

今抱えているネガティブなものにも、終わりが来るということを暗示してくれているんです。

そして最後には、”晴れますように”と”頑張れますように”。

「晴れるよ」「頑張れるよ」と完全に肯定していないところに、筆者はWANIMAの愛を感じます。

この二つの言葉はあくまで、WANIMAの「~ように」っていう”祈り・願い”なんですよね。

言い切ってしまうと、「晴れなかったとき」「頑張れなかったとき」、またショックを受けてしまいます。

「~ように」とあえて言い切らないことで、どんな状況になってもそれを否定しないストーリーになっているんです。

優しさを感じませんか?筆者はとっても心が温かくなりました。

ここにはもうひとつテクニックが隠されています。

それは、「あなたを想っています」という意志表示がされていること。

歌詞の中盤で登場した”都合のいい奴”とは相反する存在になります。

一人で負のスパイラルにはまってしまっても、傷付けてくる嫌なやつがいても。

雨があがったところには、WANIMAがいてくれる。

そう思うと、なんだか元気が湧いてきませんか?

「雨あがり」は、WANIMAの応援歌。一人で頑張るあなたを想って歌われた一曲だと、筆者は思います。

コードをご紹介します。

  • 前半

B....................C#
雨降りやんだかい? 
........F#.................A#m
まだ水たまりに映る顔が暗い
B..............C#
祈り空鮮やかに 

出典: 雨あがり/作詞:松本健太 作曲:松本健太