6年ぶりのオリジナルアルバムからの一曲

2枚組のボリュームは圧巻

サカナクション【ナイロンの糸】MVを解説!水と都市が表現するのは?愛を確かめ合う2人の姿が眩しい…の画像

6年ぶりとなるサカナクションオリジナルアルバム『834.194』

6年間の名曲たちを2枚組に納めた本作は、ボリュームもさることながらクオリティの高さが秀逸です。

『新宝島』などのシングルは言わずもがなですが、アルバム曲も引けを取りません。

独特のエレクトロサウンドは、聴き込むことで旨味がどんどん増してきます

そんなアルバムの2枚目の3曲目に収められた『ナイロンの糸』について、ご紹介します。

『ナイロンの糸』の世界観

エモーショナルでゆったりと流れる曲調に乗せ、失恋による失意と激しすぎる後悔を歌った曲。

それがこの『ナイロンの糸』です。

映像や光を多用するサカナクションライブのシーンが頭に浮かぶほどドラマチックな曲になっています。

ミドルテンポで激しい盛り上がりはないにも関わらず、心を揺さぶる展開は何度聴いても飽きません。

この曲は、カロリーメイト(大塚製薬)のCMで起用されました。

CMには、ボーカルの山口一郎さんご本人が出演されたことでも話題になったこの曲。

原曲は、山口さんが二十歳ごろにすでにあったそうです。

こんな曲をそんな年齢で作り上げているということから、すでに才能が開花していたことが伺えます。

そんな『ナイロンの糸』のミュージックビデオも、その曲の世界観を見事に表現しています。

では、このミュージックビデオの解説に入っていきましょう!

海に込められた意味

海へと身を投げる男性

たゆたう水面の映像から始まるこのミュージックビデオ。

直後、その水面へ男性が背中から身を投げるシーンへと展開します。

そして海の中を泳ぎ続ける男性。

これはどういう感情を表現したシーンなのか。

それは、終わりを告げた恋を悲観し、女性の元に今も居たかったという想いの表れです。

今も忘れられず、好きだった女性が心を支配している状況。

だから男性は海へと身を投げたのです。

それは何故なのか

このあと、順を追って説明していきます。

ネイルを塗り直す女性

上記で語った、男性とは対照的に落ち着いた様子でネイルを塗る女性

女性の目つきもどこか冷たい印象を受けます。

この曲は、この女性を失った喪失感に支配された男性の目線で語られているのです。

その理由を説明していきます。

ミュージックビデオ全体を通して男性から焦りや喪失感を感じます。

しかし、女性からは、恋愛に燃えていた時の熱情や冷静さが伝わってくるのです。

この曲のテーマとなる『失恋』は、好きだった女性に対して男性が抱く、今となっては一方的な感情

対して女性サイドからすると、終わった恋愛をどこか俯瞰して静観しているように取れます。

これらのことから、いまだに女性のことを忘れられずに苦しむ男性の姿が描かれているということなのです。

海と女性

では、何故男性は海へ身を投げたのか。

その問いに対する回答は、『女性=海』という比喩から来ています。

女性は、よく海に例えられます。

まさにここではその意味で使われているということになります。

  • 生命を育む海と同様に、子を育む母体。
  • 時に荒く、時に優しく、寄せては返す波のように行う駆け引き。
  • 愛に満ち溢れたり、気持ちが冷めれば一気に干上がる、潮の満ち引きのような恋愛観。

これらをうまく映像で具現化されているのがこのミュージックビデオになります。

海のような女性の元に居た男性が、今も一緒に居たかったと嘆く様子。

それが、海へ身を投げるという行動で表現されているのです。

冷静と情熱。静と動の対比。

恋に溺れる男性と、それを俯瞰する女性