控えめに見せかけた命令
そのまま
きっとそのまま
大丈夫じゃなくてもゆけ
ここでは血が流れなかったよ
きっと偶然だけど
出典: 鐘泣く命/作詞:川谷絵音 作曲:川谷絵音
そのままでも大丈夫だよ、とは言わないんですね。
無理をしてでも先に進め、空に昇れ。ABメロともに「ゆけ」と命令形を用いています。
少しずつでいいから、無理をしてでも「ゆけ」。
空に帰ることが重要な意味を持っているのだろうと考えられます。
そして「血が流れなかった」というフレーズ。
「愛」を「傷」に置き換えた場合、意味が通りやすくなりますよね。
血が流れない=他人(相手)には知られていない、と読み取ります。
傷が残っていても無理してでも空に帰れ。相手は傷をつけたことになんて気づいていない。
強気な歌詞の中にひとつ明るい単語
この日々が命
この日々が命
この日々が命だから
願いと歩いて
出典: 鐘泣く命/作詞:川谷絵音 作曲:川谷絵音
同じ歌詞、同じメロディを3度繰り返しているセクションです。
日=命としているのは、どちらも終わりあるものだから。
空に帰らなければ一日が終わらない、新しい命・自分が生まれないのです。
日=命が潰えてしまうまで、希望は捨てずに持っていてほしい、という意味に解釈しました。
「願い」この単語は曲に隠されたストーリーを紐解く鍵となりそうです。
「鐘泣く命」1-サビパート
あの鐘を鳴らしてよ
この愛の音聞かしてやれ
あの鐘を鳴らしたら
胸の明かりが輝くはずだから
出典: 鐘泣く命/作詞:川谷絵音 作曲:川谷絵音
サビの歌詞を読んで思い浮かぶシーンがありませんか?
呼び鈴を鳴らすと、暗かった窓の向こうに明かりがつくような光景です。
しかし、A・Bメロの考察からたどり着いたサビの歌詞が、そんなほのぼのとしたものであるはずがありません。
鐘を鳴らすと、それに気づいたり反応する「誰か」がいると考えられます。
鐘を鳴らすと音が鳴り、音が相手に届くまでの時間と相手との距離が比例します。
つまり「誰か」との間に距離があるように感じさせる歌詞ですよね。
しかしこの場合の「鐘」は、相手の心・心臓なのではないでしょうか。
頭をひっつかむようにして振り向かせろ。その場合の距離はゼロ。
空にのぼる前は流れていなかった血液も、もしかすると流れ出すかもしれない。
傷の音=血が流れる音=愛の音になぞらえているのだと考えます。
目の前でそれを見せつけてやれ! という感覚です。
冒頭で、呼び鈴と室内にともる電気を想像すると書きましたよね。
しかし呼び鈴でもチャイムでもなく「鐘」。ということは大きな音が響きます。
部屋の住人に気づいてもらうレベルの音量ではありません。
つまり、それほど大きな衝撃を与えなければ、相手の胸に気づきを与えられないということ。
そこまでしてでも相手に知らしめてやれ、というまるで復讐のような歌詞にも感じられるのです。
「鐘泣く命」2-変Aパート
1番のAメロとは異なるメロディラインで変化を持たせている2番です。
1番では特定の人物、僕や君、あなたなどの存在がありませんでした。
しかし2番に入り、ここで初めて「君」が登場します。
未来が振り向いてくれる
その時まで声を枯らさずに
一歩、一歩ずつ空気を切って君と話したい
出典: 鐘泣く命/作詞:川谷絵音 作曲:川谷絵音
未来、という非常にあいまいな時間表現があります。明日や明後日のことではないでしょう。
「いつとは明言できない、分からない」から未来というワードを使っているのかもしれません。
そんな「いつか」が訪れるまで、この曲の主人公がやりたいことは「話」なのです。
声が枯れるかもしれない、という危機感を抱く理由は2つ読み取れます。
- いつまで話し続けるか分からない(未来がいつなのか分からない)
- 君との間にある空気が声を遮ってしまうため(だから空気を切る)
省エネモードで、できるだけ近い距離での会話を望んでいます。
そこにはタイムリミットが存在せず、いつまでも未来に届かないような気さえします。