ここで突然出てきた左手、なぜ左手なのか。2つ考えられると思います。TKは右利き用のギターを使っているで恐らく作曲右手でします。(左利きで右用のギターを使う人もいますが。)

だから鏡に映った自分の姿を見ているのかもしれません。そうなると自虐的に自分のことをプラスチック製と言っていることになりますね。

もう一つ考えられるのは、ギターの音は左手のポジションで決まるということです。TKは歌詞ですらレコーディング中に歌ったものを採用する人です。

すべての曲は楽譜ではなく、最終的に彼の左手を通して正式な楽曲となり世に送り出されることになります。独自の作曲に対する感覚が、ここに「左手」という単語を入れさせたのかもしれません。

上の解釈では左手は「君のものであり僕のもの」下の解釈では「僕のもの」になります。

どちらにせよソングライティングの才能を持っているのはTKをなわけですから、それを捨てたのもTKという解釈になるでしょう。

おかしくなる

いいよ おかしくなって

出典: I was music/作詞:TK 作曲:TK

そしてサビに至るまでにどんどんおかしくなっていきます。1回しか書かれていませんけど連呼しています。

TK、完全に音楽に戻っています。I am musicです。明らかに君を音楽で痺れさせようとしています。

【I was music/凛として時雨】意味深なタイトルに込められた想いとは?!歌詞を徹底的に調査!の画像

夢を捨てられない

頭がバラバラ 
宇宙に浮いて弾けた
dreaming 夢見てる 
I was music
今だけ殺して 
出来もしない願いを
slowly 夢見てる 
目を覚ましてよ

出典: I was music/作詞:TK 作曲:TK

どう考えても音楽家になる夢を捨てきれていないサビです。叶えられないから殺してくれと言っています。

諦めようとする自分/諦めきれない自分で「バラバラ」になっているのです。

曲を作ることは体の一部

僕のここからここまでは
左手に透けたギミックドローウィング

出典: I was music/作詞:TK 作曲:TK

「ここからここまで」は具体的に何かを指しているわけじゃないでしょう。

作詞作曲することが体の一部といえるくらい、染みついてしまっているという意味です。

絶対に叶えられない(=プラスチック製)とわかっていながら、それでも挑んでいくためには、おかしくなるしかありません。

【I was music/凛として時雨】意味深なタイトルに込められた想いとは?!歌詞を徹底的に調査!の画像

過大評価

誰が無限なんですか?
明日の事も見えてしまうよ
意味もおかしくなった

いいよ おかしくなって
今日は誰になって君を覗こうか

出典: I was music/作詞:TK 作曲:TK

誰かに才能が無限に湧き出る!とか言われても、現実を冷静に見つめてしまう性格なのでしょう。

明日も今日と変わらない1日がやってくることは明白なのです。今すぐ夢を捨てるべきなのはわかっています。

でも捨てられないから、どんどんおかしくなっていきます。

「意味もおかしくなった」は伝えたいことも伝えられなくなってしまった、みたいなニュアンスでしょうか。

(TKは歌詞も半分アドリブなので、レコーディングでぽろっと言ってしまって文章の意味がおかしくなったりするのが、日常茶飯事だそうです。それが正式に採用されるのってすごいですよね。)

やっぱり君は自分自身

歌って自分の中から湧き出るものですよね。他者との関わりや事実を元にした歌も、自分というフィルターを通して形になっていくのです。

ならば歌を作るとは、自分自身を覗き込むということなんじゃないでしょうか。色々な観点から自分の中を覗き込んで曲にしていくという比喩なんでしょうね。

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タイトルの意味

「I was music」というタイトルの意味について、改めて考えてみます。

これまでどんなバンドでも、スランプを経験せずに成功し続けた人たちっていないと思うんですよ。だから誰だって、「音楽をやめよう」と思う場面は経験してるはずです。TKにもあったのかもしれません。

これはまさにその「もうやめよう」って瞬間を切り取った歌なのです。I was music(=俺は音楽だった)という響きには、諦めとやりきれなさが含まれているのだと思います。

そしてやめなかったからこそ今の凛として時雨があるのです。やめなかったということは、彼らは今まさに狂気の真っただ中にいて、おかしくなりつづけているのです。

かっこいいですよね。狂っている凛として時雨の音楽性を端的に示した歌詞だと思います。