それでは、次にそんな「あたしの向こう」の歌詞を見ていきましょう。
あたしが忘れてしまったら
あたしがいなくなってしまった
これは ついさっきの話
いいえ ずっと昔の事
出典: あたしの向こう/作詞:AIKO 作曲:AIKO
まずは、導入部分です。
人間の記憶とは、形があるわけではなく、簡単に無くなってしまうものです。
なので、忘れてしまうことで、あったはずのものは存在しなかったものになり得てしまいます。
ここでは、自分が忘れてしまったことで、記憶がなくなったことをそこに関わった自分がいなくなったと特殊な表現をしています。
そして、忘れてしまったのは「ついさっき」ではありますが、「昔の事」と打ち消しています。
これは、昔に忘れてしまったというよりは、実際の経験として過去に自分が誰かの前からいなくなったことを表しているのだと考えられます。
逢って話がしたいんだと あなたがあたしに話すから
怖くなって少しだけ 指先が冷たくなった
出典: あたしの向こう/作詞:AIKO 作曲:AIKO
その誰かとは、ここで出てくる「あなた」ではないでしょうか。
ここでは、その過去の記憶を振り返っている歌詞になっています。
「あなた」から「逢って話がしたい」と切り出されて焦る「あたし」が描かれています。
ドラマみたいに遡って本当のこと 話せたらいいけどそんなの無理だよね
出典: あたしの向こう/作詞:AIKO 作曲:AIKO
さよならなのはわかっていたけれど 知らないままであがいてみたんだ
あなたはあたしの向こうに あたしはあなたの向こうに何を見る
出典: あたしの向こう/作詞:AIKO 作曲:AIKO
「あなた」から切り出された話は、別れ話だったようです。
最初からそれを分かっていて会いに行きますが、分かっていないふりをすることで、付き合い続けられないか頑張ったことが想像できます。
しかし、これも過去の話。実際には、別れてしまっているはずです。
そんな2人は、もうお互いのことを深く見つめることはできずにいます。
その様子を、向こうを見るという形で表現しているのではないでしょうか。
インクのなくなりそうなペンで話しながらぐるぐる書いた
何か解らない模様もあたしの今の模様だ
出典: あたしの向こう/作詞:AIKO 作曲:AIKO
ここでは、その別れ話の時の情景が客観的に描かれます。
話しながら悩んで、苦しくて、悲しかったのではないでしょうか。
そんな感情で手元にあった紙にペンでぐるぐると殴り書きした模様を、自分の心境に上手に例えています。
下を向いてた帰り道に思ったよ 明日は晴れるから星はいくつ見えるかな
出典: あたしの向こう/作詞:AIKO 作曲:AIKO
さらに、別れた後の情景も描かれます。
しかし、明日に向かっていくその内容からは、切り替えて前向きに進んでいこうという気持ちを感じ取ることが出来ます。
あと一度変われたならこの道をあたしはどうやって歩いただろう
振り返ったら後悔が巻き付いてきそうだから もう見ない
出典: あたしの向こう/作詞:AIKO 作曲:AIKO
思い返すともやもやしてしまう気持ちを振り払うかのような歌詞になっています。
ドラマ「素敵な選TAXI」では、過去を変えることができますが、現実ではそうはいきません。
過去を振り返って、あの時ああしてれば、こうしてればと考えたところで何も変わらないのです。
そうやって過去ばかりを見て、後悔の念に囚われているのはやめようと歌っています。
少し向こうに行った気持ちを呼んだけど
どうにもならないね もうキスは出来ないね
出典: あたしの向こう/作詞:AIKO 作曲:AIKO
しかし、「あなた」への想いは完全に忘れることが出来たわけではありません。
とはいえ、それをぶり返したところでもう2人は相容れることはできないのです。
さよならなのはわかっていたけれど わからないフリをしていたんだ
あなたと一緒に考えた悩みも涙も
今はひとりでやれるよ
出典: あたしの向こう/作詞:AIKO 作曲:AIKO
1人になった今、これからは何事も1人で感じ、考え、生きていくしかありません。
「あたし」の心の強さを強く感じられる歌詞になっています。
これからの朝これからの夜
たまには思い出してもいい?
あなたの心に変わった形のままでもいいから
いられたなら
出典: あたしの向こう/作詞:AIKO 作曲:AIKO