MVから想像される主人公の性格は?

おもむろにイチゴのショートケーキをホールごと食べ始める女性。

やや乱暴にフォークを刺して一口食べたあと、歌詞の「私だけ」に合わせて口ずさみます。

自分のバースデーケーキが美味しくないということは、おそらく自分のことがあまり好きでないのでしょう。

自分に自信がないため自分のことが好きにもなれず、自分の誕生日も特に嬉しく感じない。

でも何もしないのもむなしいので形だけでもと思い、食べたくもないケーキを食べてしまった。

そんな感じでしょうか。

「私だけ」と考えるこの女性は、他人と比べて自分を卑下する傾向にあるようです。

見せかけのI love you
明日には見せてよ
気まぐれな言葉で
意味もなく怖くなった

出典: 見せかけのラブソング/作詞:川谷絵音 作曲:川谷絵音

「鳥かご」が意味するものとは

主人公は付き合っている相手の「I love you」という言葉を「見せかけ」と受け止めています。

実際に相手は本心ではなく「気まぐれ」で「愛してる」と言ったのかもしれません。

そこに、川谷絵音が鳥かごに入って歌っていることが関係してくると思われます。

「鳥かご」から考える主人公の恋愛観

この主人公の女性は自分に自信がないタイプのようです。

そのような場合、恋愛でもなかなかうまくいかないことが多いですよね。

相手は「気まぐれな言葉」でその場しのぎをするような人です。

この女性に対して気持ちがほとんどないのかもしれません。

しかし主人公は彼を鳥かごの中に閉じ込めるように、束縛しているのでしょう。

自分というものをしっかりもっている人ならばこのようなことはしません。

対等な人間関係の中で時間をかけて関係を築いていくことができます。

しかし、主人公は束縛し無理やりにでもそばにいさせ、依存することで愛を表現するタイプなのかもしれません。

自分にはこのようなやり方でしか相手に好きになってもらう方法がないと思っている可能性もあります。

また、そばにいれば自分を愛してくれるはずという望みも持っているのでしょう。

主人公に変化が?

2番の冒頭では、以下のような歌詞があります。

生き残ったのは 芳しい寂しさ
サラバ鳥達よ 鳴き声は止んだ
今日は朝から頭痛 嫌いじゃない私です
味見しないで作った 卵焼きも

出典: 見せかけのラブソング/作詞:川谷絵音 作曲:川谷絵音

「生き残った」というのは、自分自身のことや、相手との関係で悩んだ結果残った感情のことだと考えられます。

いびつな形で他人に依存する自分というものに「寂しさ」を感じたのかもしれません。

そのようなことに気付くと、そんな自分に対してくよくよすることもむなしくなります。

こんな自分も「嫌いじゃない」と思えるように進展したのでしょう。

また、「鳥達」とは、もちろん今までの恋愛関係で束縛してきた過去の恋人たちのことも指していると思われます。

しかしそれだけではなく、現実と向き合う自信がないために閉じ込めてきた自分の気持ちのことでもあるのではないでしょうか。

例えば、本当は自分のことを好きでもなんでもない人に依存するのは辛いと感じていたとします。

しかしそれを認めてしまうと、一気に現実と向き合わなければならなくなってしまうのです。

だからこそ見て見ぬふりをして、すがってきたのだと考えられます。

MVの2分5秒ころでは、女性は作った卵焼きを鳥かごの中の川谷絵音に食べさせています。

この女性の愛し方というのは、このように束縛をした上で自分の愛を示し続けることだったのでしょう。

一方で、相手から与えられることに対してはそこまで執着していないようにも見えます。

とりあえずI love you
それでも許すから
今日だけの言葉で
傷付くつもりはないの

出典: 見せかけのラブソング/作詞:川谷絵音 作曲:川谷絵音

「つもりはない」という表現

「とりあえず」という軽い気持ちでも構わないという主人公。

自分自身に対し愛される価値をあまり見出していないのかもしれません。

しかし、そのような扱われ方をしてもそんなに傷付かないというものの「つもりはない」と言っています。

「傷付かない」と断言するならわかりますが「つもりはない」と続くと意味が変わってきます。

「自分は冷静だ」「この程度で傷付かない」と言い聞かせているようです。

執着していないように見せて、実際はとても相手からの愛に執着しています。

そしてもし本心では傷付いていたとしても、なかったことにしそうなニュアンスがあります。

このように主人公はあらゆることに予防線を張って生きてきたのかなと思わされた部分でした。

「鳥かご」からいなくなった文鳥