幸せだった頃の二人の幻想を、夜の窓の外に見た彼女。
黒い景色の中の二人はきっと、モノクロだったのでしょう。
彼女の記憶の中の二人もモノクロです。
記憶に幻想を重ねると、黒い線はより黒さを増して鮮明になっていきます。
雨に溶けてぼんやりし始めた記憶もはっきりと輪郭を取り戻し、過去と今の落差に涙します。
振り返ってよ
私を見てよ
瞼の裏のあなたに叫んだ
汽笛が鳴ったら終わりにするから
出典: 夜汽車は走る/作詞:川谷絵音 作曲:川谷絵音
目を閉じて見えてくるのは、擬似的な夜に生きる新しい彼です。
背中を向けたまま、夜汽車から離れるように先へと歩いていきます。
彼女の気配、夜汽車の気配を感じて振り返って欲しいと願います。
夜汽車は、出発の瞬間に汽笛を鳴らすイメージがあります。
彼女は夜汽車に乗って彼の頬を触りに行き、それが叶えば彼の元を出発するつもりでいます。
つまり、出発の汽笛が二人の終わりを意味するのです。
追いかけて並んで終わらせる
まだ夜汽車よ走れ
あなたの頬を触るまで
もう一度触れたら諦めるから
あなたを忘れない
それだけは自信があるの
困ったような顔が浮かぶわ
出典: 夜汽車は走る/作詞:川谷絵音 作曲:川谷絵音
夜汽車よ「走れ」という言葉もまた他力本願な印象を受けます。
しかしこれは自らを鼓舞する表現なのではないでしょうか。
まだ諦めなくていい、振り向くまで追いかけていこうという執念です。
モノクロの思い出は雨に溶けて失われ、いずれは窓の外の幻想は見えなくなるでしょう。
思い出は色褪せていく一方で、鮮明さを失わず、更新されていく映像があります。
それは、瞼の裏の彼の姿です。
目を閉じるだけで彼を思い出せるのですから、忘れるはずがありません。
執念深く彼を追い、後悔を清算しようとする彼女を見て彼はどんな顔をするのか。
彼女が目を閉じると、彼の困惑げな表情が浮かびました。
「夜汽車は走る」は50/50の関係を求めている
この曲に登場する女性は、自分ばかりが彼に執着し続け、彼は平気な顔で離れていくことに気づいたのでしょう。
恋愛では「追う側」「追われる側」のベクトルの大きさが話題になることがあります。
本当は「追われる側」でいたい彼女が、今は「追う側」にいる状況です。
別れるのは構わない。
しかし「後悔を引きずって彼を忘れられないでいる自分」は惨めに感じるのかもしれません。
だから彼を追って後悔を清算して、関係を50/50にして終わりたいと思っているのではないでしょうか。
冒頭で「寂しい」という言葉をあえて相手に伝わらないように風雨に溶かしました。
弱さは見せない、惨めになりたくないという気持ちの現れなのでしょう。
歌詞の意味を踏まえて動画をチェック
「そんなことを歌っているのか」と考えながら、ぜひMVをご覧ください。
映像に埋め込まれた深い意味に気づくかもしれません。
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これこそがindigo la Endの魅力と言えるでしょう。
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