続く部分の歌詞も比較してみましょう。
まずは旧訳版です。
海の連中は
いつでも 陽気
見てごらん まわりを
みんな集まった
出典: Under The Sea/作詞:Howard Ashman 作曲:Alan Menken
ここのパートもずいぶん違っています。
続いて新訳版はこちらです。
まわりを見てごらん
この海の底
なんて素敵な世界だ
これ以上なにを望む
出典: Under The Sea/作詞:Howard Ashman 作曲:Alan Menken
こちらもかなり英語に近い訳になっています。
さて、このあたりであることに気づきます。
旧訳版はかなりポジティブな歌詞になっています。
とにかく海の中がすばらしいということを連呼しているのです。
それに対して英語詞に近い新訳版は、否定的な表現を含みます。
2つめのパートでも最後に「これ以上なにを望む」と釘をさす感じです。
サビ部分も「すばらしい」
サビの部分も見ておきましょう。
まずは旧訳版です。
すばらしい
すばらしい
海底で のんきにしていよう
陸じゃ 立ってるだけで
くたびれるけれど
海じゃ うきうき
自由なのさ
すばらしい
出典: Under The Sea/作詞:Howard Ashman 作曲:Alan Menken
この「Under The Sea」という歌詞に「すばらしい」という音をあてたのはすごいです。
まったく違う意味なのですが、響きがぴったりなのです。
新訳版も、次に紹介する劇団四季版もこの「すばらしい」から逃れられません。
新訳版のサビは次のようになっています。
素晴しい
アンダー・ザ・シー
ダーリン 私の言うこと信じて
あっちじゃ働くだけ
朝から晩まで
こっちじゃずっと
遊んでラッキー
アンダー・ザ・シー
出典: Under The Sea/作詞:Howard Ashman 作曲:Alan Menken
英語詞に近くするなら、すべて「アンダー・ザ・シー」でいいはずです。
しかし1度めには「素晴らしい」をあてています。
それ以外は英語詞に近い感じになっています。
全体的にこのような感じで進んでいきます。
旧訳版は「ひたすらポジティブに海の中のよさを歌う」訳をあてます。
新訳版は「人間の世界と比較しながら海のよさを歌う」訳をあてます。
劇団四季版の歌詞
さて劇団四季が日本語で上演するミュージカル「リトルマーメイド」ではさらに歌詞が違います。
浅利慶太氏が劇団四季にいたころは、主に浅利氏が歌詞を訳していました。
「リトルマーメイド」は浅利氏の手を離れていますが、それでも雰囲気は似ているように思います。
劇団四季版の「アンダー・ザ・シー」をお聴きください。
隣のワカメ
劇団四季版の歌いだし部分を見てみましょう。
隣のワカメは
青く見えるさ
陸の上なんて
ひどいとこだよ
出典: Under The Sea/作詞:Howard Ashman 作曲:Alan Menken
劇団四季版の日本語詞が違っているのは、権利の問題もあるかもしれません。
しかしそれ以上に客席で聴いていて意味が分かりやすいかどうかという観点もあると思います。
新訳版では「海藻」だったところを「ワカメ」としています。
また「大きな間違い」は「ひどいとこだよ」となっています。
どちらも言葉が易しくなっているのが分かるでしょうか。
四季版の歌詞はより平易な言葉で歌うということを目的としているようです。