1959年、フランスを代表する映画監督、ジャン=リュック・ゴダールによって製作されたロマンス映画「勝手にしやがれ」。
ひょんなことから追われる身となってしまう青年ミシェルをジャン=ポール・ベルモンドを、そんな彼との逃避行の末に心変わりを見せるショートカットのヒロイン・パトリシアを大女優ジーン・セバーグが演じたこの作品は、物語の小粋さ、映像の斬新さから世界中のオシャレな若者たちから喝采を浴びました。
作詞家・阿久悠もまた、そんなゴダールの世界に夢中になったひとりでした。
そこで彼は、フランス俳優のように色気を持つ人気沸騰中の日本人歌手に、小悪党ながらどこまでもチャーミングなミシェルを演じさせることにしたのです。
伝説の作詞家・阿久悠
日本の歌謡界を代表する作詞家のひとり、阿久悠。
演歌から歌謡曲まで幅広く作詞を手掛けた彼の作品は、実に5,000曲以上。
多作・多芸なその男は、中森明菜らを輩出した伝説のオーディション番組「スター誕生!」では審査員長も務め、まさに芸能界の父親的存在でした。
沢田研二もまた、そんな彼に愛された歌手のひとり。代表曲「時の過ぎゆくままに」の他、16曲の作詞を貰っています。
沢田研二の、色っぽく影のあるハンサムというイメージは阿久悠の作詞なくしては語れないものです。
山口百恵「プレイバックPart2」
1977年、同じく大ヒットしたシングルが、山口百恵が歌った「プレイバックPart2」でした。
この曲は、多くの山口百恵の名曲を手掛けた宇崎竜童&阿木曜子夫妻による楽曲ですが、沢田研二の「勝手にしやがれ」のアンサーソングであるといわれています。
日本のミシェルが沢田研二なら、パトリシアは山口百恵というわけです。
百恵ちゃんは真っ赤なポルシェで彼のもとに帰りましたけれどね。
「勝手にしやがれ 出て行くんだろ」これは夕べのあなたのセリフ
強がりばかり言ってたけれど本当はとても寂しがりやよ
出典: https://twitter.com/imtntmi/status/778454356567785472
歌詞
それでは別れの日の夜、男の背中を歌った歌詞を見ていきましょう。
この頃の歌謡曲ってとにかく短くまとまっていて、でもその中にきちんと物語が読み取れて、改めてすごいなと思います。
壁際に寝返りうって背中で聞いている やっぱりお前は出ていくんだな
悪いことばかりじゃないと思い出かき集め 鞄に詰め込む気配がしてる
出典: http://j-lyric.net/artist/a000aa6/l000d05.html
ベッドか布団は、壁際に寄せてあるんでしょう。
狸寝入りを決め込んだ主人公は、彼女が身支度を整える音を聞きながらも寝たふりを続けます。
手早く小さな鞄に荷物を詰め込む彼女からは、時折すすり泣く涙声が漏れています。
彼と暮した日々の、幸せだった思い出を映した写真やふたりで買ったあれこれも、彼女は残さず持ち出そうとしているのです。
行ったきりならしあわせになるがいい 戻る気になりゃいつでもおいでよ
出典: http://j-lyric.net/artist/a000aa6/l000d05.html
せめて少しはカッコつけさせてくれ 寝たふりしてる間に出ていってくれ
出典: http://j-lyric.net/artist/a000aa6/l000d05.html
でも、起きて彼女を引き留めるなんて、そんな野暮はしたくない。
映画の中では心変わりしたパトリシアですから、この歌の彼女もきっと他にいいひとを見つけていて、彼もそのことに薄々感づいているのでしょう。
俺だって彼女のことなんてもう、何とも思っていない。
寝たふりをして、そう強がってみせているのです。
バーボンのボトルを抱いて夜更けの窓に立つ お前がフラフラ行くのが見える
さよならというのも何故か シラけた感じだし あばよとさらりと送ってみるか
出典: http://j-lyric.net/artist/a000aa6/l000d05.html